始まりは2年前 筑紫、危機感が鍛えたフィジカル 高校ラグビー
「黙想ー」。12月上旬、福岡県筑紫野市にある筑紫のラグビー部員は練習が終わると、天然芝が枯れて土になったグラウンドの端に一列に並んだ。SO草場壮史主将(3年)のかけ声で選手たちは目を閉じる。練習前後のルーティンだ。試合開始前やノーサイドの瞬間を想像するなど気持ちを高めたり落ち着けたりする。
5大会ぶりの花園出場を目指した戦いは、今の3年生が1年時から始まっていた。同校は2023年、毎年9月に宗像市のグローバルアリーナで開かれる国内唯一の1年生大会「ルーキーズカップ」に初めて出場した。
ラグビー経験者がほとんどの筑紫だが、大会では流通経大柏(千葉)や松山聖陵(愛媛)、高鍋(宮崎)という花園常連校に大差で敗れた。「ヒガシ(東福岡)に届かん」「これじゃあ間に合わん」。全国大会に出場できても通用しないという危機感から選手自らが声を上げ始めた。
1年生の時から「全国」を意識し、その成果が徐々に出てきたのが今年のチームだ。新チームになって初の公式戦である県新人大会(24年12月~25年2月)は決勝で東福岡に21―66で敗れたが、その後の全九州新人大会(25年2月)で準優勝。9大会ぶりに全国高校選抜大会(同3月)に出場した。
その大会の1回戦では青森山田に62―0で快勝したものの、2回戦では全国屈指の強豪、大阪桐蔭に7―60で完敗した。自分たちのラグビーをさせてもらえず、全国トップクラスとの差を痛感しながらも「全体の体重やフィジカルを強化していく意識がついた」とNO8中山大陸副主将(3年)は振り返る。FW(フォワード)は花園県予選まで目標平均体重を95キロと定めるなど、一人一人がフィジカルの重要性を再認識した。
さらに九州の多くの高校でおなじみの「朝課外」が進学校の筑紫にもあったが、廃止された。新チームではその時間をウエートトレーニングなどに取り組む朝練に当てた。平均体重は前回チームより8キロ増。その過程にあった6月の県大会決勝では東福岡と24―31の接戦を演じた。「自分たちはやれるんだという自信になった」。長木裕監督はそう語る。
今チームは伝統のFWの強さを維持しながら、高校日本代表候補の草場主将を中心としたBK(バックス)陣にも期待がかかる。草場主将は「FWの突破力とBKの展開力の強さを連携させたラグビーができる。いろんなトライの取り方ができ、オプションが豊富」と多彩な攻撃に自信をのぞかせる。
過去6回の花園での最高成績は2回戦進出だが、今年は筑紫史上初のベスト8を目指す。中山副主将は「一戦一戦が決勝のつもりで戦い抜く」と5大会ぶりの大舞台に向けて力を込める。【尾形有菜】
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