豪雪地帯なのに運休や遅れなし? 大動脈支える上越新幹線の秘密
東京と新潟を結ぶ上越新幹線は、1982年の開業から40年以上もの間、雪による運休や遅れがほとんど発生していない。全国屈指の豪雪地帯で知られる越後湯沢などを走るにもかかわらずだ。なぜ、冬でも新幹線が安全に運行できるのか。JR東日本の消雪基地を取材した。
◇6メートル間隔で設置
シュ、シュ、シュ、シュ――。スキーシーズンに合わせて営業するJRガーラ湯沢駅(新潟県湯沢町)。駅に隣接する保守基地では、スプリンクラー(散水機)が回転しながら一定のリズムで、レールに大量の水をまき続けていた。1メートル以上の積雪が当たり前のこの地域でも、新幹線が安全走行できるのは、この装置のおかげ。冬に新幹線に乗車していると「ボボボボ」と水が当たる音がするのはこのためだ。
JR東日本新潟支社によると、越後湯沢―新潟間のトンネル区間を除いた高架上の約75キロには、約2万8000基ものスプリンクラーが設置されている。約6メートル間隔で配置されたスプリンクラーが、降雪を感知すると自動で作動し、線路上に雪が積もってしまう前に、溶かし続ける仕組みになっている。
新潟支社新潟機械設備技術センターの高橋直人副長(47)は「雪が積もってしまうと、異音を検知して新幹線が止まってしまうこともある。雪のない状態を作るのが我々の役割」と説明する。82年11月の上越新幹線開業時から導入されているシステムで、東京からの大動脈を支えている。
◇完全自動で作動
大量の水はどこから調達しているのか。
スプリンクラーに水を送るために設けられている消雪基地は、県内区間に31カ所ある。このうち湯沢北部消雪基地(湯沢町)では、新潟、群馬県境を貫く「大清水トンネル」(22キロ)からの湧き水を調達し、散水に活用している。信濃川などの河川から取水している基地もある。
上越新幹線の消雪システムは無人で管理され、自動で稼働する。在来線のように、作業員が雪をかいたり、除雪車を走らせたりすることはない。一定程度の降雪を感知すると、高架下にある基地では、高い所に水をくみ上げる「揚水ポンプ」や水を温める「ボイラー」が起動。温水と冷水を混ぜて10度前後に調整した水がスプリンクラーに送られ、雪を溶かすという仕組みだ。雪を溶かした水は、ほとんどが貯水槽に集められ再利用される。
◇最新技術の活用
上越新幹線の消雪には最新技術も取り入れられている。
2021年冬からは検査用車両「Easti(イーストアイ)」の先頭車にカメラを設置して高架上を撮影。その画像をAI(人工知能)を活用して解析し、高架上に残った雪の様子から、スプリンクラーの不具合を検知するという仕組みだ。
これまでは冬の期間(12~2月)に、月に1度は作業員が高架上を歩き、2万8000基のスプリンクラーを点検。ゴミが詰まっていないかなど一つ一つ確認していた。最新技術の導入で、作業員が不具合箇所を確認する頻度を減らすことができた。
上越新幹線はこの冬も多くの乗客が利用する。高橋氏は「開業から40年以上、大きな遅延などは発生しておらず、自信と誇りを持って管理している。乗客には冬季の安全を支える設備があると知ってもらい、安心して新幹線に乗っていただければ」と話した。【神崎修一】
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