「所管大臣がお墨付き与えていいのか」林氏陣営の労務費、疑問広がる

2025/12/26 19:48 

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 2024年の衆院選で林芳正総務相(山口3区)の陣営が支出したとされる労務費に疑義が生じている問題について、林氏は26日の閣議後記者会見で「私設秘書の適切ではない処理があった」と説明する一方、多額の労務費の支出の在り方は「適正だった」と強調した。ただ、こうした幕引きの在り方に有権者や識者からは「公職選挙法を所管する大臣として問題だ」との疑問の声が上がる。

 「氷山の一角ではないか。総務大臣の事務所がこんなことをしていたと思うと政治家は皆同じようなことをしているのではないかと疑ってしまう」。有権者で山口県下関市の40代の会社役員の男性は、林氏の説明に不信感をあらわにした。

 林氏は会見で、選挙区内の13人に支払ったとしていた13万円分の領収書を「実態に合わない領収書だった」と認めたが、選挙運動費用収支報告書を訂正し地元秘書を処分したと説明。「総務大臣の職責を果たしてまいりたい」と強調した。

 領収書に無断で名前を使われた山口県山陽小野田市の70代男性によると、問題発覚後に地元事務所の関係者が謝罪に訪れたという。この男性は「こうしたことはあってはならない」と述べ、他に名前を使われた同市の80代の男性は「秘書が勝手にやったのならどんな気持ちでやったのか。悪意があったのならとんでもない」と振り返った。

 政治資金に詳しい岩井奉信・日大名誉教授は「故意に虚偽の領収書が作られたことが判明したのに、公職選挙法を管轄する大臣が『訂正すれば済む』という前例を作れば、選挙の公正は保たれない」と批判した。

 林氏陣営が256人と1事業者に「ポスター維持管理」などの労務費名目で計約300万円を支払っていたことに触れ、「労務費の定義の曖昧さを利用した抜け穴的な手法であり、場合によっては相当人を買収できてしまう。本来は厳格化を議論すべき問題なのに、所管大臣がお墨付きを与えていいのか」と疑問を呈した。【山本泰久、山口響、平川昌範】

毎日新聞

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