アニメーター・伊藤秀次、手描きからデジタルへの転換期「正直焦りを感じている」【新潟国際アニ…
「第4回新潟国際アニメーション映画祭」(NIAFF)蕗谷虹児賞を受賞したアニメーター・伊藤秀次氏(C)ORICON NewS inc.

【画像】伊藤秀次氏が携わった『ChaO』『ホウセンカ』
同映画祭では、アニメーション制作スタジオの功績を顕彰する「大川博賞」と、制作スタッフ個人を対象とした「蕗谷虹児賞」を設けている。賞の名称は、東映動画初代社長・大川博氏と、挿絵画家でアニメーション監督の蕗谷虹児氏にちなむもので、両氏とも新潟県出身。
今回、大川博賞には『ひゃくえむ。』(監督:岩井澤健治)を制作したスタジオ「ロックンロール・マウンテン」が選出され、蕗谷虹児賞には2025年に『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』『ChaO』『ホウセンカ』と携わった劇場長編作品が立て続けに公開されたアニメーターの伊藤氏が選ばれた。
■アニメーターを志した原点は同級生との出会い
伊藤氏がアニメーターを志すきっかけとなったのは、中学生時代の同級生との出会いだった。後に『NARUTO -ナルト-』シリーズのキャラクターデザインなどで知られるようになる西尾鉄也氏と隣の席になったことが転機となったという。
「彼がアニメ制作の裏話や、誰がどのカットを描いたのかなど、いろいろ教えてくれたんです。もし彼に出会っていなかったら、今ここにいなかったと思います」
西尾氏は高校時代から自主制作アニメに取り組み、伊藤氏も作画や仕上げを手伝うようになった。そうした経験を通じて、アニメ制作は“夢”から“現実の進路”へと変わっていった。
高校卒業後は専門学校でアニメーションを学び、名古屋の作画スタジオに就職。その後上京し、アニメ制作会社マッドハウスで仕事をするようになる。
「最初は完全に余剰人員で、机もありませんでした。空いている席を転々とする“流浪の身”でした」
それでも動画を月400~500枚描き続け、『YAWARA!』『ロードス島戦記』『絶愛-1989-』などの作品で経験を積んだ。
「当時のマッドハウスは、他社で実績を積んだ方々が集まる現場で、大きな刺激を受けました。中でも年齢が近く、ひときわ輝いていたのが小池健さん(『LUPIN THE IIIRD』シリーズなど)。まさにエースという存在でした」
その後フリーとなり、『幽☆遊☆白書』などに原画として参加。さらにサンライズ作品に関わり、そえたかずひろ氏、菱沼義仁氏、下田正美氏らとの出会いが作画技術の転機となった。
「この3人が、私の作画の師匠です」
■『スチームボーイ』の5年間「初めて生活が安定した」
劇場作品では、『SPRIGGAN スプリガン』を経て、大友克洋監督の『スチームボーイ』の制作に約5年間参加した。
「毎月の報酬を保証していただき、初めて生活が安定しました。スタジオ4℃の田中栄子社長は、私に初めて価値をつけてくださった恩人の一人です」
『スチームボーイ』は、日本アニメーション史上初となる(フィルム撮影のない)フルデジタル制作の長編映画プロジェクトだった。当時はデジタルと手描き作画を組み合わせる手法が導入された時期だったという。
「当時、デジタル作画に精通している人はまだ少なく、CGで制作されたメカニックの動きに合わせてキャラクターやエフェクトを手描きで作画していました。この方法は今でも使われていて、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』でも同様の作業を行いました」
■『NARUTO』『ストレンヂア』などでアクション作画の第一人者に
西尾氏との再会をきっかけに参加した『NARUTO -ナルト-』ではアクション作画を担当し、さらにボンズ制作の劇場作品『ストレンヂア 無皇刃譚』では冒頭の殺陣シーンを手がけた。その後も新海誠監督の『天気の子』『すずめの戸締まり』などに参加し、水や炎、爆発などのエフェクト表現とダイナミックなアクション描写で高い評価を得ている。
長年第一線で活躍し続ける秘けつについて、伊藤氏はこう語った。
「面倒くさそうなカットを嫌がらずにやること。それが仕事をつないできたのは間違いありません。自分がやりたいと思ってアニメーターになったので、そこで逃げてしまったら終わりだと思っています」
■デジタル化の波に直面する手描きアニメーター
現在も紙とペンによる作画を続けている伊藤氏だが、デジタル化の流れは強く感じているという。
講演後のQ&Aでは、次世代育成プログラム「新潟アニメーションキャンプ」の参加者から、デジタル移行が進む中、手描きの技術をどう残すべきかと問われ、伊藤氏は率直な思いを語った。
「若い世代がデジタルで素晴らしいカットを作っているのを見ると、正直焦りを感じます。商業アニメではデジタルでないと参加できない作品も増えているので、自分も早急に対応しなければいけないと思っています」
さらに、商業アニメーションの現場における現実を踏まえ、「制作全体はデジタルが前提になっていく中で、手描きの技術を残すには、手描きの良さを生かせる“特別なシーン”を意図的に作るしかないと思います。それによって、作品の表現により豊かなバリエーションをもたらすこともできるのではないかと思います」と述べた。
日本のアニメーション表現の可能性を拡張し続けてきた伊藤氏は、変化の時代の中でも“作画”表現への挑戦を続けていく姿勢を見せていた。
「第4回新潟国際アニメーション映画祭」は2月25日まで新潟市中心部の4会場で開催。
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