PC高騰で大逆風…SNSでバズった「マウスコンピューター」が極限状態で挑んだeスポーツ大会…
マウスコンピューター代表取締役社長・軣秀樹氏

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■アジア競技大会の“最終リハーサル”、「機材トラブルが起きないか」責任重大な任務
――名古屋で開催されたeスポーツイベント『ASIA esports EXPO 2026』に機材提供、ブース出展をされました。競技大会や会場の様子はいかがでしたか?
「先日、名古屋出身の選手が世界大会(『CAPCOM CUP 12』)で優勝した直後ということもあって、ファンの皆さんの期待値が高まっているのを感じました。私としても、特定のタイトルだけでなく、eスポーツという文化そのもの盛り上げていきたいという思いが強いです。今回のイベントは、そのための大きな一歩になったと考えています」
――9月のアジア競技大会も今回と同じ会場で行われます。この場所が国際大会の舞台として選ばれたことについては?
「名古屋、特に会場となったAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)は空港が近く、国際大会を行うには打ってつけ。行政の皆さんも非常に熱心で、数年前から準備や検証を念入りに重ねてこられました。今回の大会は、秋のアジア競技大会を見据えた言わば“最終リハーサル”でもあります。本番とまったく同じ設備環境とすることで、日本の選手にとっても大きなアドバンテージになるはずです」
――今大会では、マウスコンピューターのゲーミングブランド『G TUNE』のPCが公式機材として採用されました。機材を提供する側としてのプレッシャーはあったのでしょうか。
「正直、『誰が優勝するか』よりも、『機材トラブルが起きないか』というドキドキの方が遥かに大きかったです(笑)。eスポーツにおいて、機材は選手のパフォーマンスを左右する生命線。特に今回は、直前にキオクシアさんからお話をいただき、最新の高速SSDを搭載することになりました。実は、この組み合わせでの大規模運用は初めての試みで、開発陣は急ピッチで膨大なテストを繰り返しました。準備期間が限られる中での責任重大な任務でしたが、ここでの実証が私たちの自信に繋がると信じて全力を注ぎました」
――準備期間といえば、メモリなどの高騰の時期とちょうど被ったのでは? 昨年末にはマウスコンピューターによるX投稿(「パソコンを買うなら今」)がバズり、想定を上回る受注で一部製品が販売停止になったことも伝えていました。大会のための調達にはかなり苦労されたのではないですか?
「まさに“ドンピシャ”のタイミングでしたね。12月頃から部材の価格が跳ね上がり、調達も非常に厳しい状況に陥りました。今回の大会のために60台のPCを確保するだけでも、実は相当な無理難題だったんです。『モノがいつ来るかわからない、でも大会の日は決まっている』という状況。開発陣にとっては、まさに地獄のような毎日だったと思います。さらにそこへ、最新パーツの組み込みというミッションが加わったわけです」
――それでも、「国産メーカー」としての構成にこだわられた。
「そうですね。私たちとキオクシアさんのように、国内メーカー同士であればギリギリの局面でも連携が取りやすい。今のPC市場で、すべての部品を日本製にすることは物理的に不可能ですが、日本で開催される国際大会だからこそ、少しでも多くの日本メーカーの機材を使ってほしい。海外勢の参入が激しい中で、私たちが選ばれる理由は“安さ”だけではありません。お客様や選手の声を反映した使い勝手、そして何より信頼性です」
■22年前にブランド立ち上げ、eスポーツの現状は「夢にも思っていなかった」
――展示ブースは、実際に競技で使われたPCを体験できるとあって人気でした。
「ブースは、PCを売るための“宣伝の場”だとは思っていません。一番の目的は、子どもたちに“本物の体験”をしてもらうこと。『メインステージで選手が使っているものと、まったく同じ環境がここにある』。その感動を味わってほしいんです」
――たしかに、多くの子どもたちが楽しんでいました。
「会場には、小学生からご年配の方まで、非常に幅広い層がいらっしゃっていました。今回の競技大会のように、10歳の子が大人を打ち負かすこともあるのがeスポーツの面白さ。ブースに最高スペックの機材を並べるのは、未来のプロ選手やファンへの“投資”だと考えています」
――22年前に『G TUNE』ブランドを立ち上げた当時、このような未来を想像していましたか?
「当時、PCゲームが競技やプロスポーツとして確立されるなんて、夢にも思っていませんでした(笑)。ただ、『PCで最高のゲーム体験を届ける』という一念で続けてきた結果、今こうして責任ある立場を任せていただけるようになった。その責任はしっかりと果たしたいと思っています」
――責任とはどういった部分でしょうか?
「競技シーンでは、わずかな遅延や不具合が勝敗を分けてしまいます。“機材の差で負ける”ということがあってはならない。私たちは、すべてのお客様に届けている“標準の高品質”をそのまま、競技の場に持ち込んでいます。特別な改造ではなく、普段皆さんが手にしているPCが世界大会でも通用するレベルであること。それが私たちの強みであり、誇りです」
――秋のアジア大会に向けて、選手のバックアップもしていくのでしょうか?
「要望があれば、強化合宿などに本番と同じ環境を提供したいと考えています。まずは今大会で、選手たちが『何の違和感もなく、最高のパフォーマンスを発揮できた』と言ってくれるかどうか。それこそが私たちへの最高の報酬であり、次なる製品開発へのアイディアになります」
――選手やユーザーからの声は大事ですよね。
「実際にユーザーの方から、『このPCのおかげでやりたかったゲームができた』とお手紙をいただくこともあるんですよ。こうしたイベントでもみなさんの生の声を聞くことができますし、とても大きな意義があると思っています」
――最後に、今後の日本のeスポーツ産業の展望について聞かせてください。
「世界的に見れば、日本のeスポーツ市場はまだまだ発展途上。だからこそ、私たちが一番大切にしているのは“連携”です。メーカー1社が頑張っても、あるいは選手だけが強くてもダメなんです。メーカー、選手、自治体、そして経産省をはじめとする政府関係者。これらすべてがしっかりと手を携え、協力し合う必要があります」
――それでこそ、発展への歩幅は大きくなるのですね。
「経産省では、eスポーツを“成長産業”と位置づけています。まさに、こうした大規模な国際大会を通じて、『eスポーツがどれほど経済や教育に波及効果がある成長産業なのか』を、実際に目で見て、肌で感じていただく。それが将来の投資や予算確保、そして産業全体の裾野を広げることに繋がります。
選手たちも、単に自分が勝つだけでなく『業界全体を盛り上げたい』という高い意識を持ってくれています。彼らと連携し、より多くの感動の場を作っていきたい。秋のアジア競技大会をきっかけに、日本のeスポーツが一段上のステージへ駆け上がる。そんな未来を、私たちは機材という側面から全力で支え続けます」
(文:竹内啓子)
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