池松壮亮「この作品に参加できたことを誇りに思う」 『開戦前夜』キャスト陣が撮影秘話語る

2026/07/31 20:00 

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映画『開戦前夜』(公開中)(前列左から)仲野太賀、池松壮亮、中村蒼(後列左から)佐藤浩市、佐藤隆太、江口洋介(C)2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト

 石井裕也監督・脚本・編集による映画『開戦前夜』(公開中)のスペシャル座談会映像が公開された。主演の池松壮亮をはじめ、仲野太賀、中村蒼、佐藤隆太、江口洋介、佐藤浩市が集結し、撮影秘話や作品に込めた思いを語っている。

【動画】『開戦前夜』キャスト陣が集結した豪華な座談会の模様

 本作は、猪瀬直樹のノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』を原案に、2025年放送のNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」を再構成し、新たなシーンを加えた138分の完全版。実在した「総力戦研究所」に集められた若きエリートたちが、日本の未来を左右する戦争の行方をシミュレーションしていく姿が描かれる。

 公開された映像では、主人公・宇治田洋一を演じた池松が、「昨年まず、NHKのスペシャルドラマとして戦後80年に放送することができまして、そこから(ドラマ版に比べ)尺としては(約)40分長い形で映画版が完成しまして、こうして公開することができるようになりました。とにかくこの物語と出会ってから、なんとか形にしたいっていう思いは一つだった」と企画段階から作品に携わってきた思いを語っている。

 本作の舞台となるのは、政府・軍・民間から選抜された、日本の未来を担う若き精鋭たちが集う内閣直属の機関「総力戦研究所」。1941年(昭和16年)4月、アメリカをはじめとする諸国との総力戦の可能性を探る目的で模擬内閣を結成し、緊迫感と臨場感たっぷりに描かれる議論が大きな見どころの一つだ。

 総力戦研究所のメンバーを演じた仲野は、政治や軍事のデータが飛び交う議論について、「数字だけでは本質は見えない。その背景にどんな人が生きているのかを感じながら演じる必要があった」と振り返る。「みんなが責任感を持って演じた結果、伝わるものができた」と手応えを口にした。

 劇中の模擬内閣で内閣総理大臣に任命される宇治田(池松)と同じ民間出身で、模擬内閣では「内閣書記官長兼情報局総裁」を担当する樺島茂雄を演じた仲野は、総力戦研究所について、「エリート中のエリートが集まり議論が行われていた場所。そこで交わされている言葉は、政治的にも軍事的にも事実を元にしたデータの情報が応酬されていく」と語る。

 一方、役づくりにおいては、「データは分かりやすく情報として平等に伝達されますが、数字というものは本質を曖昧にしてしまう部分もある」と感じたといい、「(池松演じる)宇治田さんのせりふにもありますが、その数の中には一体どんな人が生きて、どんな背景があって、どんなドラマがあるのか。数字では本質は見えなくて。ファクトの応酬ではあるけれど、しっかりその背景を感じながら演じる必要がありました」と内面に向き合いながら演じることを意識していたと明かした。

 石井監督による丁寧な演出にも触れながら、「若い俳優さんもいる中、みんなが責任感を持ちながら演じた結果、伝わるものができたのではないかと思います」と作品への確かな手応えをにじませた。

 池松・仲野らと同じく総力戦研究所のメンバーで、模擬内閣では「陸軍大臣」を担当した陸軍少佐・高城源一を演じたのは、中村。手に汗握る白熱の議論シーンが続く本作での撮影を振り返り、中村は、「本を見た時に言葉だけで物語が進んでいくので、これは演じるのもなかなか大変だなと感じました」と語る。

 議論のシーンについては、クランクインする前に総力戦研究所のメンバーを演じたキャスト、監督をはじめとするスタッフ陣とリハーサルを重ねる時間があったという。「(総力戦研究所のメンバーを演じるキャストたちと)いろいろ試してみたり、“こういう動きにしてみよう”とコミュニケーションを取りながら作り上げて行きました」と語り、「その場で生み出されたものにしっかりと反応していくことがとても大切な現場だったので、誰一人気を抜かず細かいところまで神経を張り巡らせながら演じていました」と緊張感あふれる撮影現場の様子を明かしていた。

 機密情報をもとに、戦況や内外情勢の近未来を予測する特殊研究を考案した陸軍中佐・瀬古明を演じた佐藤隆太は、国の未来を懸命に探ろうとする若者たちを深く理解し、厳しくも温かく見守る瀬古について「国や上官への忠誠心と、自分の中の正義と、研究所の若いみんなの情熱の間で揺れ動く男だったと思います。今の時代にリンクしてしまうような、だからこそ感じる“怖さ”のようなものを生々しく体現している一人だと思うので、ある種、共感してもらいやすいキャラクターなのではないかと思います」とコメント。軍人としての使命と信念の狭間で葛藤する、複雑な役どころについて語った。

 さらに白熱する机上演習を間近で見守っていた佐藤は、「(キャストたちの演技が)素晴らしくてゾクゾクするんですよね、みんなのお芝居に」と絶賛。「せりふの投げ合いとバトンのつなぎ方、頭から最後まで長い尺のものを通して撮るわけですよね。緊張感を高めて集中して。“チームとして一緒に頑張ろう”というものもありながら、一人一人が持つ熱い想いも感じましたね」と池松・仲野らキャスト陣が一丸となって作り上げた迫真の演技を称えていた。

 瀬古と同じく、総力戦研究所を作ったメンバーの一人であり、陸軍中佐・西村良穂を演じた江口は、本作のオファーを受けた当時について、「戦争映画はあまり体験してこなかったので、このようなテーマでやるときは納得した上で参加したいなと思っていました」と率直な思いを告白した。

 「台本を読ませていただき、悲劇や大きな戦いもない密室の話ではあるんですが、何かが迫ってくるような“怖さ”があるように感じました」と第一印象を語り、本作への参加は、石井監督との対話が大きな決め手になったという。「“こういう時代だからやりたいんだ“という話を聞いて、グッと気持ちが入りました。これは参加する意味があるなと。これからの世代を担う方々が、何かを感じられるような可能性があるのではないかと思い、演じさせていただきました」と熱い想いをにじませていた。

 そして、陸軍大臣で、のちに総理大臣となる東條英機を演じた佐藤浩市は、「東京裁判や残されているニュース映像での姿、そして昭和の戦争映画で描かれる東條英機から(彼に)画一的なイメージを持っていたんですが、それとは少し違ったアプローチができるのではないかと思いました」と、東條への印象と役へのアプローチを明かす。

 開戦を求めて激化する世論や軍部と、天皇への忠誠の狭間で苦悩する東條の姿も描かれ、結果として日米開戦に踏み切るまでの当時の空気も映し出されていく本作。「残された資料はそれほど多くはないですが、いい意味で凡庸で、地べた感がある人間として直面していたのならどうだったのか。石井監督と話をしながら、そんな東條を演じたいなと思いました」と、監督とともに模索した役づくりを語った。

 座談会の最後には、池松があらためて作品への思いを語った。「僕自身、この作品に参加できたこと、この作品を公開できることに、とても誇りを持っています」と自信をのぞかせると、「我々が戦後80年というものを受け継いだからには、この後の世に対して、平和に対して、積極的な働きかけが必要だと思っていますし、それを素晴らしいチームで、メンバーで、作品としてその一手となれるかもしれないものを、こうして作り上げられたことを、とても幸せに思っています。ぜひ観ていただけたらなと思います」と作品に込めた願いを観客へ届けた。


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