オーストリア総選挙、反移民の極右政党が初の第1党 連立協議へ

2024/09/30 10:34 

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 オーストリア国民議会(下院、定数183)の総選挙が9月29日に投開票され、反移民を掲げる極右・自由党が初めて第1党となった。ネハンマー首相が率いる中道右派・国民党が2位、中道左派・社会民主党が3位につけた。自由党は単独過半数には届かず、極右政党の首相が誕生するかは、連立協議の動向による。

 自由党は選挙公約に、移民規制、国境管理の厳格化による同質的国家の実現、対ロシア制裁の中止などを掲げる。

 アフリカから欧州に向かう移民の増加への警戒感や、物価高など与党・国民党への不満が自由党に追い風になったとみられる。

 自由党のキクル党首は大勢が判明した29日夜、「自由党が第1党になり、オーストリアの歴史を作った」と述べた。

 自由党は欧州連合(EU)に懐疑的で、キクル氏はウクライナ支援の継続にも反対する。またキクル氏は、ロシアに近く権威主義的な政治姿勢でEU内の他の加盟国と対立するハンガリーのオルバン首相をロールモデルにすると公言している。キクル氏が首相に就任すれば、オーストリアの外交が大きく変化する可能性がある。

 オーストリアでは第1党の党首が首相に就任する慣習があるが、憲法による義務規定はない。

 連立協議では、国民党がカギを握りそうだ。党首のネハンマー氏は「キクル氏率いる政権には参加しない」と繰り返す一方、自由党との連立の可能性は否定していない。

 社会民主党は、キクル氏を「民主主義に対する脅威」と批判し、自由党との連立を否定している。国民党と社会民主党を中心とする連立の可能性もある。

 ロイター通信によると、キクル氏は29日、「全ての政党と連立協議をする用意がある。政権を率いる準備はできている」と述べた。

 自由党は1950年代に元ナチス党員らが率い、2000年、ナチス擁護発言で批判されたハイダー党首の下で政権入りし、欧州各国から制裁措置を受けた。キクル氏はハイダー氏の信奉者とされる。

 AP通信によると、首都ウィーンの議会前には29日夕、約300人が集まり、キクル氏の政策に抗議した。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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