ゼレンスキー氏「プーチン氏に直接会う」 「停戦してから」条件一転

2025/05/12 09:06 

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 ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナ和平に向け、トルコのイスタンブールで15日に直接交渉することをウクライナ側に提案した。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日夜、「私が直接、プーチン氏をトルコで待つ」とX(ツイッター)に投稿し、プーチン氏との首脳会談を持ちかけた。ウクライナは引き続き一時停戦を求めており、直接交渉が実現するかは不透明なままだ。

 ウクライナと英独仏ポーランドの欧州4カ国は10日にウクライナの首都キーウ(キエフ)で行われた首脳会談で、12日から30日間の一時停戦を開始することで合意。ロシアにも履行を求めた。プーチン氏は11日、こうした停戦要求には直接言及せず、代わりに当事者間の直接交渉を逆提案した。

 プーチン氏は、対ドイツ戦勝80年の記念式典で訪露した各国首脳と会談した後に記者発表。ウクライナとの交渉に真剣に臨むとし「紛争の根本原因を取り除き、歴史的な展望に基づいた長期的かつ揺るぎない和平の確立を目指す」と主張した。「いかなる前提条件も設けずに交渉に臨む用意がある」とも述べ、実現の可否はウクライナとその支援国にかかっているとした。

 ゼレンスキー氏は11日午前の時点では12日からの全面的な停戦にロシアが応じることを、直接交渉に応じる条件としていた。だが夜になって、停戦の履行にかかわらず自ら交渉に臨むとの考えを表明。ただ「明日から始まる全面的で持続的な停戦を待っている」とも述べ、停戦を要求する姿勢は変わらないことも示した。

 和平交渉を仲介してきたトランプ米大統領は11日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、ロシアとウクライナの直接協議が行われれば、「少なくとも(停戦の)取引が可能かどうか判断できる」とし、「今すぐ会談を!」とウクライナに要求した。ゼレンスキー氏の態度の変化がトランプ氏の投稿を受けたものかどうかは不明だが、4月26日のバチカンでの会談以降トランプ氏と良好な関係を維持するゼレンスキー氏が、トランプ氏の意向をくんで会談に前向きな姿勢を打ち出した可能性がある。

 直接交渉が実現しても協議は難航しそうだ。ロイター通信によると、ロシアのウシャコフ大統領補佐官は11日、トルコでの交渉では、現在の戦況に加え、2022年の開戦直後に行われ不調に終わった停戦交渉で示された草案も考慮に入れるべきだとの考えを示した。

 ロイターによると、これにはウクライナの中立化などの内容が含まれる。だがウクライナはこれまで、同盟国を自由に選ぶ権利を停戦交渉で譲れない「レッドライン」として挙げており、ウクライナの反発が予想される。

 ウクライナとロシアの間では、3月に合意されたエネルギー施設への攻撃停止や、4月の「復活祭」(イースター)に合わせたプーチン氏の停戦宣言が、いずれも実効性を欠き、不調に終わっている。【ベルリン五十嵐朋子、モスクワ山衛守剛、ワシントン松井聡】

毎日新聞

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