NATO悩ます「スペイン問題」 防衛費5%目標で不協和音

2025/06/24 10:42 

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 北大西洋条約機構(NATO)加盟国の防衛費増額の新目標を巡り、NATOのルッテ事務総長は23日、新目標の対象から自国を除外するよう求めたスペインの要望について、2029年までの軍事力の強化状況を見て判断する方針を示した。24日に始まるNATO首脳会議を前に足並みの乱れを避けるため、「スペイン問題」の棚上げを図った形だ。

 今回の首脳会議では、トランプ米大統領の要求に沿って、加盟国の防衛費目標を現行の国内総生産(GDP)比2%から「5%」に引き上げることで合意を目指している。5日の国防相会合では、防衛費自体を3・5%まで増やし、インフラ整備などの防衛関連費と合わせて「5%」とする方針で大枠合意していた。

 しかし、スペインは直前になって「福祉国家の世界観とは合わない。不合理だ」などと異論を唱えた。ルッテ氏によると、スペインは防衛費をGDP比2・1%にすれば、NATO加盟国の兵力や装備の増強方針を定めた非公開の軍事力目標を「達成可能だ」と主張しているという。

 ルッテ氏は23日の記者会見で「NATOはスペインが(軍事力目標を)達成するためにはGDP比3・5%の防衛費が必要だと確信している」と指摘。NATOは29年に加盟国の防衛費と軍事力目標の達成状況を検証する方針で、ルッテ氏はスペインの主張の是非は「その結果をまつことになる」とした。

 今回の首脳会議で、トランプ氏の要求と同率の新目標を設定することに関しては「トランプ氏の懐柔と米国のNATOへのつなぎ留め以外に実質的な根拠がない」との見方が加盟国の一部から出ている。一方で、防衛費目標に例外を設けるとトランプ氏の反発を招く恐れもあり、ルッテ氏は調整に苦慮している。【ハーグ宮川裕章】

毎日新聞

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