香港国安法5年 進む中国化、取り締まり緩めず 民主派政党は消滅へ

2025/06/30 20:13 

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 中国が香港の民主化運動を取り締まるために導入した香港国家安全維持法(国安法)が施行されて6月30日で5年となった。同法違反など国家安全に関わる罪で165人が有罪判決を受け、民主派の政党やメディアは次々に解散に追い込まれた。「1国2制度」のもとで約束された香港の高度な自治は形骸化し、中国による統制強化を意味する「愛国者治港(愛国者による香港統治)」が進む。

 中国政府で香港政策を主管する香港マカオ弁公室の夏宝竜主任は21日に香港で開かれた国安法施行5年の記念行事で、国安法を香港の繁栄と安定を守る「守護神」だと称賛。その上で「外部敵対勢力による香港への介入は一時も止まっていない」として、取り締まりを緩めることのないよう求めた。

 香港では2019年6月に100万人が「逃亡犯条例」改正に反対するデモが発生。習近平指導部は危機感を強め、国家分裂や政権転覆などを犯罪行為とする国安法が20年6月に全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会で可決され、即日施行された。24年3月には香港で国家機密の窃取などを禁止する国家安全条例が施行され、統制がさらに強まっている。

 香港治安当局によると、今年6月1日までに国家安全に関わる容疑で326人を逮捕した。当局は香港メディアの取材に、うち188人が起訴されたと答えている。

 議会からも民主派は排除された。21年の選挙では中国が主導し、立候補者が「愛国者」かどうかを事前審査する制度を導入。民主派政党は候補者を擁立できず、親中派がほぼ全議席を占めることになった。民主派政党は幹部らが国安法違反容疑で逮捕され、近く全てが消滅する見通しだ。

 中国や香港政府は学校や社会教育を通じて、国安法の正当性を浸透させようと図っている。九竜地区・尖沙咀(チムサチョイ)にある香港歴史博物館では国安法施行5年に合わせた特別展を開催中だ。会場には19年の抗議デモの様子を写した写真が掲げられ、「違う意見を持った多くの市民が殴られてけがをし、不法に監禁された」とデモ参加者を糾弾する文言が並ぶ。7歳の娘と訪れた男性(37)は「安全な生活が必要だという主張には一定の理があると思う」と話した。【香港・林哲平】

毎日新聞

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