大型減税法案への批判 再び強めたマスク氏、トランプ氏の怒り買う

2025/07/02 09:50 

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 トランプ米大統領は1日、実業家イーロン・マスク氏が手掛ける宇宙・電気自動車(EV)事業に対する連邦政府の補助金を打ち切る考えを示した。トランプ氏の肝煎りで進める大型減税をマスク氏が再び公然と批判したことに対し、「意趣返し」を図ったとみられる。

 トランプ氏は1日、自身のソーシャルメディアに「歴史上、イーロンほど補助金を受けた人間はいないかもしれない。補助金がなければ、彼は店を畳んで(出身地の)南アフリカに帰っていただろう」と投稿。さらに「ロケットや衛星の打ち上げ、EV生産はもはや不要だ。巨額の資金が節約できる!」と記し、宇宙事業の「スペースX」やEVメーカーの「テスラ」に対する支援打ち切りを示唆した。

 マスク氏は、トランプ氏が4日までの成立を目指す大型減税や新年度予算を含む法案について「歳出削減が不十分だ」と公然と批判。いったん矛を収めたものの、6月下旬に再び批判を強め、法案の上院通過が迫る中でトランプ氏の怒りを買ったとみられる。

 ソーシャルメディアへの投稿後、ホワイトハウスで記者団からマスク氏の「国外追放」の可能性を問われたトランプ氏は「分からない。ただ、少し確認する必要がある」と述べ、含みを持たせる発言をした。

 また、「イーロンはEV補助の打ち切りに怒っているが、誰もがEVを欲しいわけではない。私も欲しくない」とも語った。

 トランプ氏は今年3月、「マスク氏への信頼の証し」として販売不振に陥っていたテスラ車を購入したが、米メディアによると関係悪化を受けて売却を決めた。今回の法案にも、EV購入者への税額控除の打ち切りが盛り込まれており、反EVの姿勢が一層鮮明になっている。

 マスク氏は、大統領選での巨額の献金が評価されてトランプ氏の側近となり、新設された「政府効率化省(DOGE)」の事実上のトップに就任。官僚機構の予算・人員を容赦なく削減し、トランプ政権の看板政策を担ってきた。だがその一方で、衛星通信サービスの政府契約やEVへの税控除など、自らの事業もまた公的支援に大きく依存してきた。

 トランプ氏は「DOGEをイーロンにつける必要があるかもしれない。DOGEは怪物で、イーロンを食うかもしれない」と指摘。マスク氏が主導してきた行政改革が、今や自身を標的にしかねないという皮肉な構図が浮き彫りになった。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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