トランプ氏、欧州に露原油購入停止要求 制裁の「逃げ道」との見方も

2025/09/14 14:22 

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 トランプ米大統領は13日、自身のソーシャルメディアで、ウクライナに侵攻したロシアに圧力をかけるため、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、露産原油の購入を停止するよう要求した。さらに、米国がロシアに「大規模な制裁」を科すのはNATOの全加盟国が露産原油の購入をやめた時だとも主張した。

 NATOにはロシアと良好な関係を持つ国があり、全加盟国が原油購入を停止するかは見通せない。トランプ氏は繰り返し米国による追加の対露制裁に言及するものの、実行は見送ってきた経緯がある。米国による対露制裁強化がさらに先送りされた格好で、停戦交渉は出口が見えない状況が続きそうだ。

 トランプ氏は投稿で、「NATOの勝利へのコミットメントは100%にはほど遠く、露産原油を購入しているのは衝撃的だ。これがロシアとの交渉力を弱めている」と指摘。その上で、「あなた方(他のNATO加盟国)が準備ができ次第、私も行動する用意がある」と説明した。

 さらに、露産原油の大口購入国である中国が「ロシアを強くコントロールし、掌握すらしている」との見方を示し、NATO加盟国が中国に「50~100%」の関税をかけることは「戦争を終結させる上で、大きく役立つ」とも記した。

 トランプ氏は従来、ロシアの脅威を訴える欧州の一部が、露産の原油やガスを購入し、戦費の調達を支えていることに不満を示してきた。NATOの中で、ロシアと関係が良好なハンガリーとスロバキアに加え、欧州の対露対応とは一線を画すトルコは、露産原油の購入を続けてきた。

 一方で、トランプ氏の今回の主張は「(米国が)逃げ道を探しているようなものだ」(リトアニアのランズベルギス前外相)との見方も出ている。

 トランプ氏はプーチン露大統領へのいらだちを隠さず、対露制裁の強化も示唆してきた。ただ、米政権は追加の制裁が「ロシアの反発を招き、より強硬な姿勢に転じさせる」との懸念も示す。

 また、仮に中国への関税を強化すれば、継続中の米中による関税や貿易を巡る協議に悪影響を及ぼす可能性がある。トランプ氏は露産原油を購入するインドに対して8月に「2次関税」を発動したが、インドはむしろ、ロシアや中国との関係を強調。米印関係はぎくしゃくしている。トランプ氏は12日には制裁に関し、「既に多くの手を打っている」と述べ、手詰まり感もにじませていた。

 ウクライナは繰り返し、米側に対露制裁の強化を求めてきたが、さらに先送りされる可能性が高まった。ロシアに圧力がかからなければ、戦争がさらに長期化する恐れがある。【ワシントン松井聡】

毎日新聞

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