WBCに万博…「タブー」とされてきた要職の訪日相次ぐ台湾の狙い

2026/03/09 20:02 

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 台湾の政府高官が「私的」に日本を訪れるケースが相次いでいる。7日には卓栄泰行政院長(首相に相当)がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の応援のために日本を電撃訪問。日本と正式な外交関係がない中、中国の反発をできるだけ抑えながら対日関係の強化につなげたい狙いがある。

 台湾メディアによると、卓氏は7日未明に台北を出発し、東京ドームで行われた台湾・チェコ戦を観戦して、夜に台北に戻った。「チーム台湾」と書かれた帽子をかぶり、スタンドでファンと握手を交わす場面もあった。

 2004年に游錫堃(ゆうしゃくこん)行政院長(当時)を乗せた飛行機が中米訪問からの帰途に台風の影響で那覇空港に緊急着陸したことがあるが、それを除けば現職院長の訪日は1972年の断交以来初めてだ。

 台湾の正副総統、行政院長、外交部長(外相に相当)、国防部長(国防相に相当)が日本を訪問することは「タブー」となってきた。「一つの中国」原則を掲げる中国との関係を考慮した結果だ。

 01年には前年に総統を退任した李登輝氏(当時)が病気の治療のために訪日を計画した際、ビザ発給を巡って日本国内で大きな議論になった。

 16年から政権を担う民進党は対日関係重視を強く打ち出している。日本での大規模な行事に合わせる形で台湾高官の訪日が続く。

 22年7月には銃撃されて死亡した安倍晋三元首相の葬儀に蔡英文政権の頼清徳副総統(現総統)が「個人の身分」で出席。25年7月には林佳竜外交部長が大阪・関西万博を視察し、当時は一国会議員だった高市早苗氏らとも会った。

 台湾側はいずれも「私人としての日程」(総統府や外交部)として、言及を避けてきた。中国を強く刺激するのは得策ではなく、制限がある中で訪日や要人同士の面会という「実績」を積み上げてきた形だ。

 中国はその都度日本側に抗議を行っているが、これまで大きな外交問題に発展することはなかった。

 卓氏の場合は、高市首相の「台湾有事」答弁にともなう日中関係の悪化を踏まえて、さらに配慮した形跡がある。卓氏は「休日に自費で行った私人の活動」と説明した上で、台湾代表の応援以外に目的はないと強調した。日本滞在は5時間程度にとどめ、日本の政治家との面会は今のところ確認されていない。【台北・林哲平】

毎日新聞

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