時速194キロ暴走 裁判長「常軌を逸した高速度」 危険運転を認定
大分市で2021年2月、法定速度の3倍超の時速194キロで車を運転して衝突死亡事故を起こしたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死)に問われた当時19歳の男性被告(23)の裁判員裁判で、大分地裁は28日、危険運転の成立を認め、懲役8年(求刑・懲役12年)の実刑判決を言い渡した。辛島靖崇裁判長は「常軌を逸した高速度で危険極まりない」と述べた。
判決によると、被告は21年2月9日午後11時ごろ、大分市の県道交差点で乗用車を運転し、法定速度が時速60キロのところ、時速194キロで直進。対向車線から右折してきた同市の会社員、小柳憲さん(当時50歳)運転の車に衝突し、小柳さんを死亡させた。
検察側は公判で①「制御困難な高速度」で車を運転し、右折車に②「妨害目的で接近(妨害運転)」し衝突したとする2要件で危険運転を主張。弁護側は刑罰の軽い同法違反(過失致死)が適当だと訴えていた。
判決は①の高速度について「運転操作のわずかなミスで事故を発生させる危険性がある速度」と定義。その上で、現場道路には凹凸があり、時速194キロで走行すれば「車体に揺れなどが生じ、操作ミスが起こりうることは否定できない」と指摘した。弁護側は「車線を逸脱しておらず、制御できていた」と訴えたが、判決は逸脱がなくても「事故を発生させる実質的な危険性がある」とし、危険運転と認めた。一方、②は「右折車の通行を積極的に妨害しようとした意図は認められない」として退けた。
判決は量刑理由で、被害者は装着していたシートベルトがちぎれて車外に投げ出されたとし「結果は重大」と言及。被告の暴走行為は「加速を楽しむための身勝手なもので厳しい非難に値する」と批判した。ただ、被告は若年で反省しており、起訴から初公判まで長期間の不安定な立場に置かれたことも踏まえ、懲役8年が相当とした。今回の事故では検察が当初、同法違反の過失致死で起訴し、遺族の署名活動などを受けて危険運転致死に訴因変更したため、起訴から初公判まで2年以上を要した。
判決後、大分地検の小山陽一郎次席検事は「主張が一部受け入れられなかったことは遺憾。上級庁とも協議のうえ対応したい」とのコメントを出した。【神山恵、山口泰輝、井土映美】
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