<BeMe>広がる「子持ち様」批判の緩和 企業にいま求められていること
子育てをする職場の同僚を「子持ち様」とやゆして批判する投稿がSNS(ネット交流サービス)上で後を絶たない。
「子持ち様」批判をする人は、子どもの発熱などを理由に会社を休んだ同僚の仕事を肩代わりしたりして、不公平感を抱いているケースが多い。
そんな中、育児休業を取得した同僚の仕事を肩代わりする人に手当を支給したり、子どもの有無にかかわらずさまざまな名目で休みを与えたりする形で、社員同士の不公平感を緩和しようとする動きが各企業に広がっている。
◇育休社員の同僚に手当、「なんとなく休暇」
三井住友海上火災保険は2023年、育休を取得する社員の同僚に最大10万円の一時金を給付する「育休職場応援手当(祝い金)」を創設した。「出産育児を祝い、快く受け入れて支える企業風土を醸成するため」としている。
同様の取り組みは他の大企業にも広がっており、厚生労働省も育休や短時間勤務の利用者の業務を肩代わりした同僚に手当を支払った中小企業に助成金を支給している。
また、休暇の取得方法を柔軟にすることで、社員全体の満足度を高めている企業もある。
IT企業「DUMSCO(ダムスコ)」には、通常の有給休暇に加え、月1日好きなタイミングで取れる「なんとなく休暇」がある。有休より、気軽に取得できるようネーミングした。
健康アプリを手掛けていることから、体調不良の一歩手前で休める雰囲気を醸成しようと22年に導入した。アンケートをしてみると、平日に予定を入れたいときや、家族の用事を入れたいときに取得している人が多かった。
子育て中の社員からは「急な休みでも、申し訳なさが軽減する」「何かあってもこれを使えばいい、というお守りのような安心感が生まれた」といった声も寄せられたという。
◇孫、おいめいのための「育児休暇」
一方で、性別・世代を問わず、実子ではない子どもの育児参加を促すユニークな休暇制度もある。
「SOMPOひまわり生命保険」(東京都千代田区)が23年に創設した「まご・おいめい育児休暇」だ。
対象は、孫、おいめい、弟妹が生まれた社員で、該当する子どもが2歳1カ月になるまでに最長7日間の休みを取得できる。
「子どもの体力は底なしで、私が疲れていてもお構いなし。『子育ては大変』という話はよく聞きますが、その大変さを実感しました」
24年12月に、兄の次女エリーちゃん(1)のための育児休暇を取得した同社広報部の白石佳織さんはそう振り返る。
兄は普段、海外で暮らしているが、このときは米国人の妻と長女マイラちゃん(3)、エリーちゃんの家族4人で帰国していた。
白石さんはマイラちゃんの七五三の写真撮影に付き添い、義姉が着物の着付けをしている間にエリーちゃんをあやした。
2人のめいはかわいかったが、けんかをしたり、急に泣き出したり、どこかに行ってしまったりと目が離せなかった。
白石さんは「こんな状態では休日でもゆっくり休めない。改めて、パパやママはすごいと思いました」と話しつつ、「数日でも育児休暇を取得すれば家族に喜ばれますし、自分自身も子どものかわいさを見て幸せな気持ちになれる。周りにもおすすめしたい制度です」と笑顔を見せる。
◇問題を放置したら大変なことに
「女性の社会進出が進むにつれ、企業は子育て中の女性も基幹業務に就けるよう制度設計してきましたが、同僚がしわ寄せを受けることをほとんど顧みてきませんでした。やってみるまで課題が見えてこなかったからです。問題を放置すれば、社員の満足度や士気に関わり、最終的には業務の生産性にも影響を及ぼす恐れがあります」
子育て支援を経済学の視点から研究する東京大大学院の山口慎太郎教授はそう前置きしたうえで、同僚に手当を支給したり休みを与えたりする各企業の取り組みについて、「貢献に対して報いるのは当然のこと。上司はせいぜい『ありがとう』と言うことくらいしかできないので、会社としてきちんと制度設計するのはいい流れ」と評価する。
◇企業は持続可能な仕組み作りを
さらに、今後は子育てに限らず社員の多様なニーズに応える制度を整えることが、優秀な人材を確保するうえで重要なポイントになると予測する。
「残業をたっぷりすれば短期的には生産性が高まりますが、持続可能ではない。労働力不足がこれからも続く中、多くの社員に効率的に働いてもらうには、みんなが納得のいく仕組みや制度を作っていくことが各企業にとって不可欠になるでしょう」
そして、こう付け加えた。
「今の若い男性は(女性と同じように)育児をする人が多く、早く帰りたいという当然の要求がある。育児を巡る問題はこれまで女性のものと捉えられがちでしたが、これからは男女を問わずにタスクを分散したり労働時間を管理したりするマネジメントが当たり前になるはずです。『子持ち様』という言い方は多分なくなりますよ」【太田敦子、御園生枝里】
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