JR「マンガッタンライナーI」ラストラン 震災乗り越え22年 宮城

2025/03/23 19:52 

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 宮城県出身のマンガ家、石ノ森章太郎さんの作品キャラクターが描かれたJR仙石線の「マンガッタンライナーI(ワン)」が23日、ラストランを迎えた。東日本大震災による約4年の休止期間も含め22年間、沿線住民に愛され続けてきたが、老朽化のため引退が決まった。最終列車は午後、石巻駅を出発。生みの親で元石巻駅長の佐藤光男さん(76)は万感の思いを込め「出発進行」の合図で送り出した。

 2003年にデビューした初代車両は「サイボーグ009」や「仮面ライダー」「がんばれロボコン」などのキャラクターが躍動感たっぷりに描かれている。絵柄の違う2代目が08年に誕生したが、地元住民らの要望で初代も運行を続けた。11年の震災では線路が津波で被災し運行休止に。15年5月の全線復旧後に復活し、仙台市から石巻市の海沿いの線路を駆け抜けてきた。

 この日は石巻駅で引退セレモニーがあり、石巻出身のアニメソング歌手、遠藤正明さんが「夢と思い出を運んでくれてありがとう」と、感謝の歌を披露。三笠亜希子・石巻駅長は「町と町、人と人、心と心をつないできた復興の象徴。皆さんと笑顔でお見送りしたい」とあいさつした。

 午後0時46分、上りの最終列車が動き出すと、ホームに詰めかけたファンから「ありがとう」の声が上がり、線路沿いの多くの市民らも大きく手を振って見送った。

 地元の園児や三笠駅長とともに、最後の出発の合図を送ったのは元駅長の佐藤さん。多くの人でごった返す様子に、22年前の光景を重ね「当初は5年ぐらいと思っていたので、これだけ長く走ってくれるとは。涙がこぼれそう」と喜んだ。

 石巻駅長に就任した00年当時は、石ノ森さんの後押しも受け「石ノ森萬画館」の建設が進んでいた頃。市民らの情熱に刺激を受け、まちづくりに取り組むメンバーと協力してJRの支社や市との交渉を重ね、列車の実現にこぎつけた。

 佐藤さんは「『出発進行』は前へ、未来へ進むこと。22年前にできたのだからまた市民らが一つになればⅢ号も夢ではない」と、新たな始まりに期待を寄せた。【百武信幸】

毎日新聞

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