学校に剥製、なぜあるの? 「ニホンアシカ」発見の立役者に聞く
今年3月、千葉県立木更津高校に戦前から伝わる「オットセイ」の剥製が、実は絶滅危惧種の「ニホンアシカ」だということが濃厚になり、話題になった。そもそもなぜ高校に剥製があるのか。「学校で剥製を見た記憶がない」という人もいるが、学校によって違うのか。今回の発見の立役者である、県立中央博物館の斎木健一さん(63)に話を聞いた。【柴田智弘】
――今回の発見の意義を教えてください。
◆木更津高、旧安房南高、長狭高、東金高などで、生物の先生が代々大切にしてきた剥製が多く残っていました。こうした剥製が、今では得ることができない生物の貴重な情報源になる可能性を示しました。
――なぜ、これらの学校に剥製が導入されたのでしょうか。
◆明治期から昭和初期まで、旧制中学校の生物の授業では分類学が大きな割合を占めました。実物の観察から動物の細かな分類を学ぶ教育で、生きた実物の代わりに(剥製を含む)標本が用いられました。そのため、旧制中学校で教材として導入されたのです。
※今回話題になった剥製は、教材として購入されたものだった。剥製を製造した会社が「ニホンアシカ」と「オットセイ」を混同した可能性が指摘されている。
――その剥製が今の高校にほとんど無いのはなぜでしょう。
◆1942年に今の学習指導要領にあたる「教授要目」が改定され、分類の学習対象が、細かな「目(もく)」から、より大きな鳥綱(鳥類)、哺乳綱(哺乳類)といった「綱(こう)」レベルに変わりました。標本を観察する授業は行われなくなり、戦後の新設校で剥製はほとんど導入されていません。
こうして「教材」でなくなった剥製は、場所を取るので破棄された例が多いようです。教材でないものをいつまでも保管する必要はなく、学校が責められることではありません。千葉高のように火災で一部が焼失した例もあります。
――せっかくの剥製が……現代でも活用できないものでしょうか。
◆実物教材は言葉で説明するより、生徒の注意を引く効果があります。工夫次第で生徒が生物学に興味を持つよう活用できそうです。剥製には希少動物も多く、生物多様性や絶滅について考えるきっかけを与えてくれると思います。
――今後も剥製から新たな発見を得られますか。
◆大阪府立岸和田高校では「オットセイ」とされた剥製のDNAを生徒が調べたらニホンアシカだったとして、2014年に日本哺乳類学会で発表して表彰されました。その聞き取りを22年に行い、今回の木更津高の発見につながりました。
山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)が全国の高校などに行った調査では、希少なコウノトリやトキの剥製も見つかりました。(剥製を含む)標本の調査は、学校ではまだあまり行われていません。まだまだ貴重な標本が眠っているかもしれず、今後も新たな発見の可能性はとても高いと思います。
一方、こうしてる間に標本が捨てられるかもしれず、廃棄される前に救う必要があります。剥製などがある学校はぜひ、博物館にお問い合わせください。
◇さいき・けんいち
1962年、横浜市生まれ。東京学芸大大学院では化石を研究。東京大で理学博士。94年から県立中央博物館に勤務し、現在は主任上席研究員。植物学と理科教育が主な研究テーマ。
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