表示から「日付」省略、涙目のシール… 期限見直しで食品ロス削減へ

2025/05/17 12:00 

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 食品を買う時、新しい方がいいからとつい棚の奥に手を伸ばしてしまう人もいるかもしれない。でも、ちょっと待って――。

 期限切れで廃棄される食品を減らそうと、スナック菓子や缶詰に記載される「賞味期限」や傷みやすい食品に記載される「消費期限」を見直す動きが進んでいる。

 ◇マヨネーズの賞味期限表示を変更

 キユーピー(東京都渋谷区)は13日、主力商品のマヨネーズのうち新たに6品の賞味期間を1~3カ月長くし、日付を省いて年月のみの賞味期限表示に変更すると発表した。家庭での賞味期限切れやメーカーへの返品、廃棄の削減効果を期待する。

 キユーピーは、テストを実施し賞味期限を延長しても品質は変わらずおいしく食べられることを確認した。また、1日単位での在庫管理がなくなるため、量販店や物流業者などの取引先からは、業務の効率化を期待する声が上がっているという。広報担当者は「食品ロスの削減だけでなく物流問題といった社会課題の解決につながればといい」との話す。

 ◇ポテトチップスや食用油でも

 同様の取り組みは各種の食品で加速しており、湖池屋(東京都渋谷区)は2024年4月からポテトチップスなどジャガイモを原料に使う商品、トウモロコシが原料の商品の賞味期限をそれぞれ2カ月延長し、年月表示に変えた。

 昭和産業(東京都千代田区)も24年9月から食用油の一部商品で賞味期限を延長し、年月表示に変えた。ただし、今後、対象商品を増やすには品質確認などが必要なため時間がかかるという。担当者は「変更の成果を見ながら他の製品でも徐々に進めていきたい」と話す。

 ◇「涙目シール」で客の目を引く

 コンビニエンスストアでも消費期限を延ばす取り組みが広がっている。

 ローソンは12日、手巻きずし4品の消費期限を従来より6時間延長すると発表した。ファミリーマートでは3月以降、おむすび、弁当などの米飯商品約70品の消費期限を2時間延長。期限の迫った商品に貼る値下げシールに涙目のおむすびのイラストをあしらい「たすけてください」というメッセージも付けた。客の目に留まりやすいよう工夫した。

 ◇「買う時は賞味期限を長いものを選ぶ」

 消費者は食品期限についてどのように考えているのか。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティング(東京都新宿区)は3月、全国の20~60代の男女を対象に賞味期限について調査した。

 賞味・消費期限にどれくらい注意を払っているか尋ねた質問で「期限を必ず守る」と答えたのが賞味期限で17%、消費期限で36%だった。賞味、消費の期限とも大半は「多少、期限が過ぎることがある」「期限は気にしない」と答えた。

 一方、考えや行動に関する質問(複数回答)では、40%が「買う時には賞味期限を確認する」、31%が「賞味期限が長いものを選んでいる」と回答。購入の際は賞味期限への意識の高さが浮かび上がった。

 ◇「賞味期限」と「消費期限」は違う

 最後にあらためて意味の違いを確認したい。賞味期限は、開封しなければおいしく食べられる期限のことで「年月日」または「年月」で表示される。消費期限は未開封の状態で安全に食べられる期限で、お弁当やケーキなどに「年月日」で記載される。

 農林水産省の推計では、22年度に家庭や事業者から出た「食品ロス」の量は約472万トン。国民1人当たり1日おにぎり約1個分にあたるという。こうした食品ロスを減らそうと、農水省や消費者庁は納品期限の緩和や賞味期限の延長などを呼びかけてきた。【宮川佐知子】

毎日新聞

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