量子技術とAI融合した計算技術の実用化へ 新研究拠点完成 産総研

2025/05/19 09:45 

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 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)に、複数の量子コンピューターやスーパーコンピューターを備えた新しい研究拠点が完成した。量子技術と人工知能(AI)を融合した新しい計算技術を社会実装するのが狙いで、総額1600億円規模を投じる大型プロジェクトだ。

 この研究拠点は「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」。岸田文雄政権下の2022、23年度補正予算で計620億円を投じて整備した。24年度の補正予算ではさらに1000億円規模を投じて設備を増強する計画だ。

 目玉は、形式の違う複数の量子コンピューターをそろえたことだ。実用化すればスパコンよりもはるかに速く計算できるとされるが、まだ研究段階のため、さまざまな形式が実用化に向けてしのぎを削っている。

 このため、富士通製の超伝導型▽米国製の中性原子型▽東大などが手掛ける光量子型――の3種類の量子コンピューターを導入。拠点内のスパコンとつなぎ、材料、金融、創薬や生成AIなどの研究にチャレンジする。部品を極低温下で試験できる冷凍機なども整備し、量子コンピューター自体の開発にも活用する。

 同拠点の計算機は、産総研だけでなく、さまざまな企業や研究者が有償で利用できる。18日には落成式があり、出席した石破茂首相は「世界最高水準の高速計算を用いた実証ができる環境が整えられた。中小企業にも研究に取り組める高度な共同研究設備が備わっており、政府としても強力に支援していきたい」と話した。【酒造唯】

毎日新聞

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