「原稿読み上げるだけ」環境相に募る怒り 新潟水俣病・公式確認60年

2025/06/01 11:11 

 新潟水俣病の公式確認60年式典があった5月31日、浅尾慶一郎環境相と患者・被害者団体との懇談も開かれた。団体側は、60年経てもなお未認定のまま水俣病の症状に苦しむ患者・被害者の早期救済を要求したが、浅尾氏からこれに応じる踏み込んだ発言はなかった。訴訟が長引く中で高齢化する患者・被害者にとって、この日の懇談は、怒りといらだちを募らせただけのものに終わった。【木下訓明、戸田紗友莉】

 「今求められているのは政治的リーダーシップのもとでいかに解決するかだ」

 式典に先立つ午前の懇談に臨んだ患者・被害者団体は、浅尾氏に対し、高齢化した未認定患者を人道的に救済するための政治的な決着を迫った。

 団体側は、公害健康被害補償法(公健法)の運用では救済が進まないために訴訟をしていると主張。にもかかわらず、浅尾氏は「公健法の今まで以上の丁寧な運用に努める」と繰り返したため、団体側は「事務方の作った原稿を読み上げるだけで、政治家としての姿勢が全く感じられない」と語気を強めた。

 懇談後の報道陣の取材に、新潟水俣病共闘会議の中村周而議長代行は「公健法では被害者救済にならなかった歴史の事実を全く学んでいない」と浅尾氏を批判。集団訴訟の原告団長で新潟水俣病阿賀野患者会の皆川栄一副会長は「私たちには時間がない。(訴訟でなく)ぜひ話し合いの場で解決に進んでほしい」と強調した。

 県と新潟市は国に対し、未認定患者・被害者の早期救済のために認定基準などの抜本的見直しを求め続けている。花角英世知事は式典終了後、報道陣の取材に対し「患者・被害者の切実な声を受け止めた後に環境省がどういう対応をするのかしっかり注視したい」と話した。

 一方、浅尾氏は、県と市の求める抜本的救済について、懇談終了後の報道陣の取材に「県と市、熊本(県)とも連携を取って、公健法の丁寧な運用で対応していく」と述べるにとどめた。

毎日新聞

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