避難所開設→「TKB」確保 大船渡山林火災に学ぶ運営の教訓
岩手県大船渡市の大規模山林火災発生から3カ月余りが過ぎた。直後から市内各地に設置された避難所は最大12カ所で計1249人が避難し、延焼の抑制、鎮圧に伴って少しずつ縮小。避難者が仮設住宅に入居し、5月末に全て閉鎖された。東日本大震災以来となる大規模な避難所の運営を迫られる中、浮かび上がった運営の教訓や課題は何か。調整役を担った市職員の大津泉さん(49)と佐藤誠さん(48)に聞いた。【聞き手・工藤哲】
――改めて発生当時の状況を教えてください。
◆今回の大きな特徴は、災害の区域が最初から決まらず、避難指示が次々に拡大していったことです。これはまったく想定外でした。また風向きの変化もあって、消防の意見も聞きながら火がどの方向に向かうかの予測も必要でした。火の方向次第では、避難所を動かす可能性もありましたが、幸いここまでは広がりませんでした。
発生直後は、まず火が届かなそうな地域の公民館や小学校などの指定避難所の中から、住民が自宅と往来しやすい距離にある場所(市民文化会館「リアスホール」や三陸公民館など)を避難所にしました。それを公表し、「ここに避難できます」と市民に告知しました。住民は個々で行き先を判断し、それぞれの場所に集まりました。避難した人の中には親戚宅に身を寄せた人や車中泊の人などもおり、実際に避難所で過ごしたのは避難対象の3割ほどでした。
――開設初期にしたことは。
◆「寒さ対策」「食事対策」「毛布などの寝具の確保」の三つでした。いわゆる「TKB(トイレ、キッチン、ベッド)」の確保です。発生時は2月下旬でまだ冷え込み、避難所では体育館などの冷える場所だけでなく、暖房の利く部屋なども開放しました。
震災以降、市が企業や自治体と災害協定を結んでいたことが効果を発揮し、カップ麺や即席みそ汁といった食べ物などは比較的早く確保できました。大船渡は地域の絆が強い土地柄で、地元の社会福祉法人などが余っている毛布を提供してくれました。14年前に震災を経験し、住民の防災意識が高かったことで、避難は比較的迅速だったと思います。
今回最も難しかったのは発生直後の対応です。物資が届かない最初の1日、2日目はリアスホールなどが混雑し、仕切りもありませんでした。この1、2日を乗り切ると物資が届き始め、避難所ごとの人数の偏りも次第に調整できました。
こうした災害は、その種類や発生の時刻などにもよって対応が変わります。発生直後はまず「人命第一」で、「ためらわずに避難所へ」の意識をさらに高めてほしいです。
――14年前の震災の時との違いは。
◆震災の時を振り返ると、電気、ガス、水道、通信が止まり、多くの人は発生から数日は寒さに耐えて助け合いながら自力で過ごすしかありませんでした。
当時と比べれば今回の火災は電気やガス、水道、通信が使え、市内のコインランドリーも使えて買い物もでき、かなり利便性はありました。移動する三陸道が整備され、学校なども防災機能を備えた施設として建てられました。避難所の仕切りテントも県などから早いうちに送られてきたこともあり、避難所の環境は当時よりはかなり改善されたと思います。
――改めて大規模山林火災の課題は。
◆犬や猫などを飼う人たちからは「ペットと一緒に過ごしたい」という声が寄せられましたが、実際に同伴できる避難所を新設できたのは最初の避難所開設から約10日後でした。ペットは避難所に連れ込めないため、脇で車中泊を続ける人も少なからずおり、同じ姿勢で固まらないよう注意を呼びかけました。ペットを「家族の一員」と考える人は年々増えており、災害の状況次第ですが、早いうちから「ペット同伴可」の避難所の開設が今後必要になるかもしれません。
――消火現場の映像を早い段階からもっと見たかった、という避難者の声がありました。
◆市の災害対策本部では、消防や自衛隊などから送られる映像などの情報からさまざまな判断をし、「人命第一」の対応をとってきました。情報提供といった意味では、得られた映像では場所がはっきりしないものが含まれたり、映像の整理に一定の時間がかかったりしました。
情報が不確定なまま市民に伝われば、それがさらに大きな避難者のショックにつながる可能性がありました。当時は各地で混乱していたこともあり、市としては日に2回記者会見を行うことでできる限りの情報提供に努めました。
――今後の対策は。
◆避難所は日々、さまざまな物資が運ばれたり、新たな避難者やその家族の出入りもあったりして必要な物資が常に変わります。今後もさまざまな災害の形が予想され、状況に応じて柔軟な対応が必要です。「こうすれば大丈夫」という確たる形は手探りですが、強風に伴う山林火災は今後、全国各地で起こり得ます。多くの方の支援で避難所を何とか運営できたこともあり、経験や教訓を今後に生かしたいと思います。
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