「母が元気なうちに、めぐみに会いたい」 横田拓也さんが講演 新潟

2025/06/10 08:15 

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 北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(行方不明当時13歳)の弟で、拉致被害者家族会の横田拓也代表(56)が8日、新潟県上越市内で講演した。解決に向けた目立った進展がない中、県内外から会場に集まった約230人に「母が元気なうちにめぐみに会って抱き合いたい。そのために一人一人が我がごとに置き換えて、必ず取り戻すんだという強い意思表示をしてほしい」と訴えた。

 拓也さんは冒頭で父滋さん=2020年に87歳で死去=が撮影しためぐみさんと拓也さんら兄弟の写真を紹介。「めぐみは朗らかでにぎやかな性格で、ひまわりのような姉だった」と振り返り、「拉致されてから47年が経過したが、13歳のめぐみちゃんで止まっている。写真や記憶の中でしか会えず本当に元気でいるだろうかと毎日考えているが一向に進展しない」とやりきれない思いを吐露した。

 今月5日で滋さんが亡くなってから5年がたち、政府が認定した未帰国の拉致被害者12人のうち存命の親は母早紀江さん(89)だけとなった。

 拓也さんは講演で、滋さんが犬の散歩に出て毎日のようにめぐみさんが拉致された通学路付近で証拠を探していたり、浴室で涙や声を押し殺してお湯を掛けながら泣いたりしていたエピソードを紹介した。拓也さんは「両親はどれだけ苦しい思いをして耐えていたのだろうか。親世代の苦労は絶対に報われるように私たちの代で必ず(帰国を)実現しなければいけない」と述べた。

 講演の終了後、報道陣の取材に応じた拓也さんは「父は心の奥底では悔しくて怒りに満ちていたと思う。この5年間、誰一人帰って来られていない無力さがあって、父の墓の前で『必ず解決させる』といつも心に誓ってきた」と話し、「母はどんどん体が小さくなっているようにも見え、本当に時間がない。時間が経過すればするほど世論に忘れられてしまう危険があるので、これからも発信していきたい」と決意を語った。【戸田紗友莉】

毎日新聞

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