「原爆投下と同じ」 トランプ氏発言に被爆地から抗議の声

2025/06/26 19:14 

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 米軍によるイランの核施設への攻撃について、トランプ米大統領が「戦争を終結させた」と述べ、広島や長崎への原爆投下と「本質的に同じことだ」と発言したことに対し、被爆地からは怒りや失望の声が上がった。

 14歳の時に広島で被爆し、国内外で証言活動をしている梶本淑子さん(94)=広島市西区=は「イランの核施設への攻撃と、広島、長崎への原爆投下は次元が違う。原爆がどんな被害をもたらすのかを知らないまま発言したことにがっかりした」と憤った。その上で「とにかく核兵器をなくしてほしいというのが被爆地の願い。核兵器廃絶に向けた議論を進めてほしい」と訴えた。

 広島を訪れる外国人観光客らに被爆証言をしている岡原民幸さん(86)=同区=も「乱暴な攻撃を正当化していることにあぜんとした。武力による解決を認めることになり、ウクライナを侵略するロシアと同じだ」と述べた。広島市中区の原爆ドーム前では26日、被爆者や市民らが集まり、トランプ大統領の発言に抗議の声を上げた。

 また長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(84)は「憤りを通り越してあきれ果てている」と失望。「イランの核施設をいきなり攻撃するなど、核保有国の力の政策で世界を支配しようとする考え方だ。80年間、なぜ核兵器が使われなかったのか、我々被爆者たちがどうやって核のタブーを作ってきたか、トランプさんにも考えてほしい」と語気を強めた。

 長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の議長で、被爆者の川野浩一さん(85)は「発言はピントが外れており、本質的には全然違う。米国は日本に原爆を投下し、たくさんの人を殺し、傷つけた。そのことに対する反省の色が全くない」と厳しく批判。「どうやって平和的に物事を解決し、根源的に憎しみをなくして世界の平和を作っていくのか、トランプさんに意思が全くないことの表れだ。そんなことで勝利を味わうことは根本的に間違っている」と強調した。

 長崎市の鈴木史朗市長は26日、報道各社の取材に応じ、「原爆投下を正当化するものであれば被爆地として大変遺憾」と述べた。【武市智菜実、安徳祐、尾形有菜、百田梨花】

毎日新聞

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