こども誰でも通園 「国の補助金不十分」7割 試行自治体アンケート

2025/06/27 06:30 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 親の就労を問わず保育施設などに子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」について、2024年度に試行した全国118自治体のうち約7割の81自治体が、事業者への国の補助金が不十分と考えていることが、毎日新聞のアンケート調査で判明した。利用実績がないと補助金が払われず、保育士を維持する人件費が事業者にのしかかるためだ。

 自治体からは「国の補助額では事業者が赤字になる」などの声が上がる。制度は26年度から全自治体で本格実施の予定で、課題の解消が急務だ。

 制度は、専業主婦(夫)や育休中の在宅子育て家庭も含め、親の就労に関わらず生後6カ月~3歳未満の未就園の子どもを対象に、市区町村の指定する保育所や認定こども園、幼稚園などで月10時間を上限に預かる。「全ての子どもの育ち」を支えようと国が進める「異次元の少子化対策」の目玉の一つで、23年度に一部自治体で試行が始まった。

 制度を実施する事業者への補助金は、24年度が子ども1人につき1時間あたり850円で、国が4分の3、自治体が4分の1を負担。子どもの利用実績に応じ事業者に補助金が支給される仕組みだ。この他、保護者から1時間あたり300円前後に抑えた利用料を徴収するところもある。

 アンケートは25年1月下旬~3月に実施し、24年度に制度を試行した全118自治体から回答を得た。国の補助金について「足りない」と答えたのは81自治体(68・6%)で、その理由として「国の補助金や(保護者の)利用料より、人件費や光熱水費が圧倒的に多い状況」(北海道登別市)、「補助金の対象外となる(利用がない)時間帯の人件費が発生し、赤字経営を強いられている」(沖縄県浦添市)といった指摘があった。

 こども家庭庁は自治体や現場の声を受け、25年度の補助金について0歳児1300円▽1歳児1100円▽2歳児900円(いずれも1時間あたり)――と増額した。しかし、札幌市や愛知県大府市、北九州市などは、それでも十分ではないとしている。少子化の影響で利用児が都市部より少ない地方では、利用実績に関わらず基本の補助金を支給する仕組みを求める声も根強い。

 事業者の参入動向にも影響が出ている。アンケートで「事業者の参入は進まない(一部にとどまる)」と答えた自治体は65自治体で半数を超えた。理由では「国の補助額では運営が厳しく、保育士の人材確保ができない」(滋賀県米原市)、「利用者が少なかったときに(人件費などが)園の負担になり、リスクを負って導入する園は少ない」(栃木県足利市)などと訴えがあった。

 保育問題に詳しい日本福祉大の中村強士准教授(社会福祉学)は「(月利用時間が限られ)園になじみがない親子への対応には経験やスキルを持つベテラン保育士が必要。そのためには人件費がかかり、真面目に取り組む園ほど持ち出しが多く赤字になる。国からの支援が十分でなければ割に合わず、身を引く園もあるだろう」と指摘した。【田崎春菜】

毎日新聞

社会

社会一覧>

写真ニュース