商品化までじっくり1年半 チョウザメ使ったコラーゲンカレー発売

2025/06/27 12:00 

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 山あいの三重県大台町で養殖されるチョウザメを使ったカレーが約1年半かけて、商品化された。食品ロス対策として幼なじみ同士でレシピを考え始めてから試行錯誤を重ね、大台町の新たな“特産品”として売り出されている。

 大台町神滝地区にある養殖会社「オーシャン・トラスト」の辻良さん(58)は2021年から宮川の支流、始神(はじかみ)川のほとりで、清流を活用した循環型農法の一環で、高級魚として知られるチョウザメを養殖し、卵であるキャビアや白身をスモークにして商品化している。

 だが、皮や軟骨などのあらは使途が思いつかず、コラーゲンなどが含まれていると知りながら、やむなく処分していた。「食品ロスを出さずに何か作れないか」。夫の思いを聞いた妻の由佳里さん(58)は、小学校からの幼なじみで、いなべ市に住む水谷早百合さん(58)に相談した。

 水谷さんは、辻さん夫妻と同じ旧南島町(現在の南伊勢町)出身で、3人は中学、高校の同級生だった。洋菓子店「マハロマフィン」を営むパティシエで、人気番組の料理コンテストに出演経験を持つ料理創作家でもある水谷さんは、気心の知れた辻さんから特徴などを聞き、「コラーゲンのとろみを生かして煮込む料理を作ろう」と考え、思いついたのがカレーだった。

 自宅に大量のチョウザメのあらが届くと、アドバイスに従って丁寧に下処理をしてスープをとり、スパイスを調合して野菜とともに煮込むなど改良を重ねながら、約2週間でイメージ通りの味に仕上げた。試食した辻さん夫妻も風味豊かな味わいに感激したという。

 幼なじみの力を借りて誕生したチョウザメのあらを使ったカレーだったが、商品化までは長い道のりを進むことになる。

 23年秋、辻さんは大台町商工会にカレーの商品化を持ちかけた。町内の食品加工会社に委託して製造されたカレーは大量に作ったことや加熱時間が変わった影響で、同じ味にはならなかった。

 立て直すべく、町商工会から紹介された和食料理人の嶋田潤治さんが監修し、レトルト用に試行を重ねた。1年以上の時間をかけて商品化にめどが付いたカレーは、水谷さんも「あらのおいしい部分が凝縮されている」と太鼓判を押した。

 新商品はチョウザメを意味する英単語を入れて「奥伊勢スタージョンコラーゲンカレー」と名付けられた。あらから取ったスープに9種のスパイスとトマトなどの野菜を入れて煮込み、風味豊かに仕上がった。あらに含まれるコラーゲンがつなぎの役割を果たし、小麦粉を使わない「グルテンフリー」の商品としても期待できる。

 由佳里さんと水谷さんは、パッケージも工夫した。スタージョンという言葉になじみが薄いことから、「わかりやすさ」を求めて、色鉛筆のタッチでチョウザメやスパイスなどが描かれた親しみやすいデザインを選んだ。

 「奥伊勢スタージョンコラーゲンカレー」(180グラム)は税抜き1200円で、大台町商工会のECサイト「奥伊勢マルシェ」や道の駅おおだいなどで100食分が販売されている。今後は主力商品の国産キャビアの認知度を上げて出荷量も増やすことで、チョウザメのあらの量を確保し、カレーの生産も増やして事業として軌道に乗せることを目指す。【下村恵美】

毎日新聞

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