震災で町職員40人が犠牲 遺族が役場跡に石碑建立へ 岩手・大槌

2025/08/05 14:18 

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 2011年の東日本大震災で町職員40人が犠牲になった岩手県大槌町は4日、職員の遺族らが求めた当時の町役場の跡地での石碑建立を認める方針を遺族側に伝えた。遺族側は2年半前に慰霊碑の建立を要望したが、碑の性格や碑文を巡って町と意見が対立。協議の結果、犠牲者名を刻字しない代わりに町の対応の不備を明記することで両者は大筋で合意した。

 町が遺族に提示した条件は、碑に犠牲者の名前を刻まず、死亡した人数だけとする▽町の対応の問題点を明記する▽慰霊に関する文言は入れず、震災伝承が目的と明確に示す――の3点。

 遺族有志の会代表の小笠原人志さん(72)は町役場で取材に応じ「個人的には一日も早く建てることを優先したい」と話した。会員からも同様の意向が寄せられたといい、近日中に正式に町の条件に同意する考えを示した。

 大槌町は震災直後、低地にあった役場前に災害対策本部を設置した。当時の町長や本部員ら計40人が津波の犠牲になった。当時の役場は町を二分する議論の末、19年に取り壊された。

 遺族有志の会は追悼と町の対応の問題点を伝える慰霊碑を役場跡地に建立しようと計画し、23年3月に跡地の無償貸与を町に要望した。平野公三町長は受け入れる方針を示したが、同じ年の12月に「役場跡地は震災伝承の場であり、慰霊碑はなじまない」と拒否に転じた。その後、1年半余りにわたって設置場所や碑文について協議が続いていた。【奥田伸一】

毎日新聞

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