「指名数No.1」「溺れろ」はアウト ミナミのホスト看板が変貌

2025/09/18 16:45 

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 「億超えPLAYER’S」――。西日本最大の繁華街・ミナミを歩くとホストクラブの派手な広告看板が目に付く。しかし、この夏、こうした看板の一部に変化が見られた。営業成績など高額な飲食を誘うようなうたい文句の掲示が、法改正に伴い禁止されたためだ。悪質な営業が社会問題となるなかでの規制だが、店舗の関係者からは「ルールなので従うしかないが、影響が大きすぎる」と戸惑いの声も聞こえる。

 「年間売り上げNo.1」「支配人」。ミナミの街中に並ぶ広告看板の多くには、店舗の紹介に加えて、ホストの売り上げや役職を示す文字が並んでいた。しかし、6月下旬以降はどの店舗の看板もこうした文字を表示することができなくなった。

 6月28日に施行された改正風営法に伴い、警察庁は「営業成績を上げるために高額な飲食をする意欲をそそらせる」ような宣伝を規制する通達を出した。具体的な表現として、「〇億円プレイヤー」「指名数No.1」などランキング制の存在を示す文言や、「○○を推せ」「○○に溺れろ」などのうたい文句が対象になるとしている。

 その背景には、女性客に多額の借金を背負わせる悪質なホストクラブの存在がある。

 売掛金(ツケ)などの名目で女性客に多額の借金を負わせるなどの悪質な営業が相次いで発覚して社会問題となった。

 改正法では、虚偽の料金説明や客の恋愛感情につけこむ「色恋営業」の禁止などを新たに規定。売掛金を返済させるために、売春や性風俗店で働くことを求める行為なども禁じている。

 府警は改正法の施行を前にホストクラブ関係者らに向けた説明会を開催。広告規制の内容などを説明したが、関係者らは一様に困惑した表情だった。

 ホストクラブを運営する男性は「広告を規制されるとお客さんは何を基準に店を選べばいいのか分からなくなる。経営への影響が大きいだろう」と懸念を示した。

 施行から1カ月がたった夜。街を歩くと、看板は変貌していた。売上金額やランキングを記載した部分はテープのようなもので隠されていた。

 ミナミのホストクラブなどで作る大阪飲食健全共同組合の春山学会長(53)は「法律で決められたルールなので粛々と従う」と受けとめる一方で、「報道されているような悪質ホストクラブは本当に一部だということも知ってほしい」とも強調する。

 組合は今回の改正を受けて、勉強会を開催するなど各店舗に適切な営業や法令の順守を呼びかけるとしている。

 春山会長は「より多くの店舗に組合に参加してもらい、情報共有をして業界全体でルールを守っていきたい」と語った。【松原隼斗】

毎日新聞

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