復帰のロシア勢 ペトロシャンの隣に敏腕コーチ フィギュア五輪予選

2025/09/18 16:25 

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 フィギュアスケートのミラノ・コルティナ冬季オリンピック予選の女子シングルに個人の中立選手(AIN)として出場するロシアのアデリア・ペトロシャン選手(18)が18日、中国・北京の国家体育館で公式練習を行った。練習ではショートプログラム(SP)の曲をかけて滑り、リンクサイドからはエテリ・トゥトベリゼ・コーチが練習を見守った。

 ◇無地のパーカで登場

 ウクライナ侵攻を受け、2022年3月に国際スケート連盟(ISU)がロシア勢を国際大会から排除して3年半。AINという立場ではあるが、ロシアの選手が表舞台に帰ってきた。

 練習開始前、他の選手が各国のジャージーを着る中、ペトロシャン選手は無地の水色のパーカを着用してリンクサイドに姿を見せた。傍らには、18年平昌冬季オリンピックで金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワ選手ら、数々の五輪メダリストを指導してきたトゥトベリゼ・コーチがいた。トゥトベリゼ・コーチは22年北京五輪で、ドーピング違反で失格となったカミラ・ワリエワ選手のコーチとしても知られる。

 2人は柔らかい表情で言葉を交わしながら、リンクに向かった。リンクに上がると、ペトロシャン選手の表情は一気に引き締まった。

 ISUの公式サイトによると、ペトロシャン選手は07年生まれの18歳。ロシア・モスクワ出身で、競技を始めたのは11年。身長は152センチと小柄だ。

 21年のジュニアグランプリ(JGP)シリーズ・スロベニア大会では、210・57点の高得点をマークして優勝した。この大会のフリーでは、出来栄え評価はマイナスだが、4回転トーループを降りている。

 同年のシーズン以降は国際大会への出場はないが、国内では実力を発揮してきた。23年、24年のロシア選手権では2連覇を達成。24年の大会ではトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させるなどし、SP85・78点。フリーは4回転トーループを2度、トリプルアクセルを一度降り、177・14点をマーク。合計でも262・92点と異次元の得点をたたき出した。ISU非公認記録のため単純比較はできないが、世界歴代3位に相当する。

 ◇高難度ジャンプはほぼ跳ばず

 この日の練習でも、安定した滑りと技術の高さを見せつけた。

 パーカをトゥトベリゼ・コーチに手渡し、上下黒の練習着姿になると、練習の冒頭から両手を上げて跳ぶ3回転ルッツをきれいに着氷。その後も連続ジャンプなど、3回転ジャンプを中心に次々と降りていった。

 マイケル・ジャクソンさんの曲をつなぎ合わせたSPの曲かけ練習では、冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)をきれいに降りると、続く3回転ルッツも着氷。一つスピンを飛ばした後の連続3回転ジャンプは、フリップの着氷が少し乱れたが、後ろにきっちりとトーループをつけた。ステップシークエンスやスピンも滑らかな動きで、スキルの高さがうかがえた。

 その後はジャンプの練習に多くの時間を費やした。3回転ルッツ―ダブルアクセル―2回転トーループの連続ジャンプや、ルッツ―トーループの連続3回転ジャンプ、単発のループ、サルコウなどの3回転ジャンプをほぼミスなく着氷させていた。練習の合間にはトゥトベリゼ・コーチと何度も言葉を交わし、時折、笑顔を見せる場面もあった。

 一方で、持ち味とされる4回転トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)などの高難度のジャンプは跳ばなかった。一度、4回転サルコウに挑んだように見えたジャンプはあったが、回転が大きく足りず、着氷も両足だった。

 練習を終えてリンク中央でお辞儀をすると、関係者からは拍手が送られた。

 規定により今大会、ロシア勢は取材エリアを通らないことになっている。ペトロシャン選手とトゥトベリゼ・コーチは、ともに取材エリアに姿を見せずにリンクを後にした。

 女子のSPは19日に行われる。注目を集めるロシアのエースは、世界からどのような評価を受けるのだろうか。【北京・玉井滉大】

毎日新聞

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