「北九州市がムスリム給食」誤情報拡散→市に苦情殺到 業務に支障も

2025/09/23 20:28 

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 「北九州市がムスリム対応の給食実施を決めた」との誤情報が交流サイト(SNS)で広まり、市に抗議する電話やメールが多数寄せられていることが判明した。市の海外連携施策への抗議を含めて1000件以上に達し、業務にも支障を来しており、市教委は22日夜、ホームページで「事実はない」と説明した。

 拡散された誤情報は、アフガニスタン出身のイスラム教徒(ムスリム)の女性による、宗教上の禁忌である豚肉やポークエキスを除いた給食をムスリムの小学生の子どもに提供してほしい、との陳情が市議会教育文化委員会で可決(採択)。陳情に基づき、北九州市でムスリム対応の給食が提供されるようになったなどという内容だ。

 実際には、女性からの陳情は2023年6月に受理され、同8月に審理された後に継続審議となったものの、市議会が改選された25年2月に廃案。市議会で採択されることはなかった。

 一方、市は同月、アレルギーのある児童や生徒も食べられるよう、大豆や乳といったアレルギー特定原材料など28品目を除いた給食「にこにこ給食」を実施。28品目には豚肉も含まれており、結果的にムスリムにも対応した給食となった。

 にこにこ給食はこの時のみしか実施されていないが、これらを曲解し、女性の陳情が市議会で採択されてムスリム対応の給食が提供されるようになったなどという誤情報がSNS上などで拡散。「外国からきたくせに」「(給食が)嫌なら母国に帰れ」など排外的なメッセージと共に広まった。

 誤情報を基にしたと思われる市への抗議の電話やメールは、19~22日で約1000件に達した。市が25年6月にインド・テランガナ州と結んだ友好協力協定を、国の方針である「5年間で50万人以上の人的交流」の一環と混同した上で「移民受け入れ策だ」などと抗議する内容も多くあったといい、抗議への対応で市の業務に支障が出たという。

 市教委は22日夜、ホームページ上に「『学校給食においてムスリム対応することを決定した』という趣旨の投稿がみられますが、そのような事実はありません」と掲載した。担当者は「誤情報が一気に広がったことに困惑している」と話した。【山下智恵】

毎日新聞

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