震災犠牲職員の石碑、町と遺族が建立に合意 町の対応不備明記 岩手

2025/11/11 15:37 

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 東日本大震災で町職員40人が犠牲になった岩手県大槌町は10日、職員の遺族有志の会と震災伝承を目的とする石碑を役場跡地に建立することで合意した。碑文の内容などを巡って2年半余りにわたって協議し、犠牲者名を刻まない代わりに町の対応の不備を明記することで折り合った。

 町役場で平野公三町長と町職員遺族有志の会代表の小笠原人志さん(73)が協定書に調印した。

 小笠原さんによると、町から石碑の設置許可が得られ次第、12月上旬にも建立したいという。費用は遺族有志の会を中心に、現役職員やOBの協力も得る予定。

 石碑は1畳ほどの大きさで、冒頭に「人命を守ることこそが最大の公益」と書く。震災発生直後、低地にあった当時の役場前に災害対策本部を設置し津波の直撃を受けたことを「町で事前に定めた災害対策に則しておらず、多くの犠牲者を生むことになった要因の一つ」と刻む。

 調印後に取材に応じた平野町長は「石碑を活用し伝承に取り組む」と語った。小笠原さんは「要望から調印まで長かったが、今後の災害で犠牲者が最小限にとどめられればよい」と話した。

 大槌町では2011年3月の震災による津波で、低地の役場前の災害対策本部にいた町長ら幹部や、出先から戻ろうとした職員ら計40人が犠牲になった。町民への避難勧告も出されなかった。

 遺族有志の会は役場跡地に犠牲者名を刻んだ慰霊碑の建立を計画し、23年3月に町に用地の貸与を要望。町は慰霊目的の設置を拒否したうえで現在の役場敷地内への建立などを提案し、両者で協議を続けていた。【奥田伸一】

毎日新聞

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