学校のいじめアンケート、機能してる? 被害訴えられない「悪い例」
いじめの早期発見に役立つとして、全国の学校で実施される「学校アンケート」。しかし、いじめで自殺に至るような悲劇が繰り返されてしまうのは、なぜでしょうか。その疑問に「スクールロイヤー」春田久美子弁護士(福岡県弁護士会)が答えます。【聞き手・近松仁太郎】
――多くの学校が定期的にアンケートを実施していますね。
◆つらい、苦しいと感じていても、先生や保護者に相談できない児童・生徒は少なくありません。学校アンケートは小さな「SOS」を拾うためのツール。毎月実施する学校もありますが、設問内容や回答のさせ方はまちまちです。アンケートとして機能しているか疑問に思うものもあります。典型的な悪い例を見てみましょう。
ある小学校の5年2組の帰りの会。先生がクラス全員にアンケートを配り「この会が終わるまでに書いて出すように」と告げました。設問は「誰かにいじめられていますか」「困っていることは?」などで自由記載欄ばかり。複数のクラスメートからいじめられていたS君は怯えながら周囲を見渡し、「特になし」と記入しました。
――S君は加害者の前では怖くて書けなかったのでしょうね。
◆そうですね。アンケートは自宅で記入させ、封をした状態で後日、回収するなど回答しやすい工夫をしている学校もあります。
――設問にも問題がありますか?
◆いじめ被害を認めることは勇気がいります。惨めに思い、親を悲しませまいと隠す子もいます。いじめの有無をストレートに聞いても答えづらいのです。自由記載欄は、どう書けばいいか悩む子も多いので、必要最小限にすべきです。
いじめを苦にした自殺が起きた時、学校が「アンケートに何も書かれていなかった」と言い訳する例が目立ちます。ですが、有効性に乏しいアンケートを形式的に繰り返してもSOSを拾えるはずがありません。自殺するほどつらい思いをしていた被害者が、なぜ何も書けなかったのか。その原因に思いを巡らせてほしいのです。
――文部科学省のホームページでは「いじめ対策に係る事例集」を紹介する中で、効果的だった学校アンケートを紹介しているようです。春田弁護士が考える良いアンケートとはどんな内容ですか?
◆評論家の荻上チキさんが代表理事のNPO法人「ストップいじめ!ナビ」(東京)がネット上で公開している「あしたニコニコメモ」がとてもよくできています。設問は9種類。まず「つらい思いをするようになったのは、いつからですか」と時期を確認します。続いて被害内容を尋ねますが、「イヤなあだ名をつけられたり、人前でからかわれる」「無視される」など、いじめの代表例を11種類も挙げ、チェックを入れる方式になっています。回答しやすいだけでなく、子どもたちに「これもいじめに当たるのか」との気づきを与えてくれます。
被害の目撃者について尋ねる設問は、先生が状況を確認する際に役立ちます。好きな先生や信頼できる人についての設問は、子どもが被害を打ち明けやすい「聞き取り役」の大人を探すヒントになります。あしたニコニコメモはネット上で検索し誰でもダウンロード可能。実際に活用した先生は「回答内容が充実し、潜在的な問題に気づけた」と言います。
アンケートは回収後のフォローも大切。学校側が適切に対処できれば、多くの子どもたちを救えるはずです。今後も効果的な学校アンケートとはどんなものか考え続けたいと思っています。あなたの学校で実施されている効果的なアンケートがあれば、メール(fuku−shakaibu@mainichi.co.jp)でタイトルに「学校弁護士」と付け、情報をお寄せください。
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