米ウクライナ協議、「安全の保証」で進展 領土問題は依然隔たり

2025/12/16 11:14 

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 ロシアとウクライナの和平案を巡り、ウクライナのゼレンスキー大統領と米国のウィットコフ中東担当特使らは15日、ベルリンで会談した。会談では、ウクライナが求める「安全の保証」に米国と欧州が関与することで合意したが、領土問題では依然として立場の隔たりが残った。

 ゼレンスキー氏はドイツのメルツ首相との共同記者会見で、停戦に向けた段階に移る前に「『安全の保証』の内容が軍や国民に明確に理解できるものでなければならない」と強調した。特に、停戦監視を誰がどう担うかをはっきりさせる必要があるとした。

 ウクライナは停戦後のロシアの再侵攻を防ぐため、欧米による「安全の保証」を求めてきた。これまで最も強力な手段として北大西洋条約機構(NATO)加盟を主張してきたが、ゼレンスキー氏は14日、欧米から「安全の保証」が得られれば加盟を断念する用意があると表明していた。

 一方、領土問題については依然として立場の相違があり、合意には至らなかった。ロイター通信によると、米国は東部ドネツク州からのウクライナ軍の撤退を求める従来の姿勢を変えず、領土割譲を拒否するウクライナとの隔たりは埋まらなかったとみられる。

 ゼレンスキー氏は記者団に対し、「理想的な和平案はまだ存在しない」とも述べ、ウクライナの交渉団が近く訪米し、協議を継続する方針を示した。

 米国とウクライナの協議は14日に続いて行われた。15日夜には英仏伊など欧州各国と欧州連合(EU)、NATOの首脳も訪独し、ゼレンスキー氏やウィットコフ氏と会談した。

 会談後、欧州10カ国とEUの首脳は共同声明を発表。米国は声明に参加していないが、米国と欧州が協力してウクライナに「安全の保証」や復興支援を提供することを確認した。

 具体的には、有志国連合の枠組みの中で、意欲のある国が参加する多国籍軍を欧州主導で編成し、米国が支援することが盛り込まれた。ウクライナ軍の再建や領空の安全確保などにも取り組むとしている。

 また、米国主導の停戦監視による新たな攻撃の早期警告▽攻撃された場合、平和と安全を回復する手段を取るという法的拘束力のある約束▽ウクライナ軍を80万人規模に設定すること――も明記された。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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