自治体4割「法規制必要」 災害時のSNS偽情報、AIで巧妙に

2026/04/07 05:00 

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 災害時にSNSなどで拡散する偽情報の対応について、都道府県と政令市の約4割が情報の拡散を法律で規制する必要があると認識していることが毎日新聞のアンケートで判明した。「必要ない」との回答はゼロで、「どちらとも言えない」「その他」とする自治体からも拡散防止策の必要性を指摘する声が相次いだ。

 4月14日で発生から10年となる2016年の熊本地震では「ライオンが放たれた」との偽情報が画像付きでSNS上に拡散し、熊本市や熊本県警などに問い合わせが殺到する事態が起きた。24年1月の能登半島地震では虚偽の救助要請が投稿されて警察官が実際に救助に向かうケースもあった。人工知能(AI)の高度化で情報の真偽を見極めることがさらに難しくなるなか、アンケートでは自治体の強い危機感がにじんだ。

 ◇SNSの収益化システムを問題視

 アンケートは2~3月に実施し、47都道府県と20政令市の全67自治体から回答を得た。偽情報対策として法規制が必要か尋ねたところ、29自治体が「必要」と回答。災害対応や被災者支援への影響を理由とする声がほとんどで、「閲覧数に応じ収益が発生する仕組みが真偽不明の情報や不安をあおる投稿の拡散を助長する恐れがある」(千葉市)とSNSの収益化システムを問題視する意見もあった。山梨県は「自制の呼びかけだけでは限界がある」と訴えた。

 必要と回答した自治体に具体的な規制内容を聞いたところ、SNS運営者に閲覧数による収益化の停止を求める声が多く、アカウント凍結、投稿削除も例として挙がった。AIで生成された画像・動画には、AI由来であるとの表示義務化を求める意見もあった。

 佐賀県は法規制の必要性を求めながらも、「災害時にはSNSなどが貴重な情報源となることもある。真に救助を求める発信をためらうような規制とならないことが必要」と指摘した。

 法規制の是非を明確にしなかったのは38自治体で、その中にも「人命救助を阻害する可能性があるため(偽情報拡散の)防止策は不可欠」(福島県)といった意見があった。

 ◇表現の自由との兼ね合いも

 一方、表現の自由の侵害につながらないか慎重な自治体もあり、新潟市は「SNSは個人が自由に意見や情報を発信できるツールであり、発信者が得た真偽不明の情報が流れるのはやむを得ない」と回答した。

 能登半島地震で被害が大きかった石川県の奥能登4市町(輪島市、珠洲(すず)市、能登町、穴水町)にも同様の内容を聞いたところ、珠洲市と能登町が法規制を「必要」と回答した。珠洲市は「救助や救出の妨げになるような混乱を引き起こす場合には、法的な対応が必要だと考える」とした。

 災害時の偽情報を巡っては総務省の有識者会議が抑止策を議論している。25年9月には法整備を含め検討する内容を盛り込んだ中間報告を取りまとめた。

 また、25年12月に公表された首都直下地震の被害想定では、虚偽の被害写真や不安をあおるデマなどが大量に発生することで、被災地の活動に悪影響を与える可能性が指摘されている。

 緊急時の社会心理に詳しい東京大大学院の関谷直也教授(災害情報論)は「悪意のある偽情報に対しては刑法に基づき毅然(きぜん)と対応すべきだが、災害時には、善意で発信されるものも少なくない。以前から誤情報・偽情報も多く、閲覧数に応じた収益化を止めたとしても効果は得られないだろう」と指摘する。「情報を発信する際は『自分が正しい』と思いがちだが、正義感は誤った方向に向かうこともある。発信する一人一人の認識を変えていくことが大切だ」と語る。【中里顕】

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