性暴力相談窓口、SNS対応9カ所のみ 障害者が利用しづらく
障害者の性暴力被害は潜在化しやすいと言われる。その理由の一つが、相談機関へのアクセスのハードルだ。
性暴力被害者が医療、心のケアに関する支援や法的助言を1カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」は1月時点で全国に56カ所あるが、そのうちSNSで相談に対応しているのは9カ所にとどまる。
聴覚など障害の特性によっては電話や対面での相談が難しく、SNSやメールを望む人もいる。専門家は「多様な相談手段を早急に確保すべきだ」と指摘する。
◇メール相談受け付けも半数どまり
ワンストップ支援センターは、2011年3月に政府が閣議決定した「第2次犯罪被害者等基本計画」で設置促進が盛り込まれた。
18年10月までに全都道府県に設置され、多くは自治体から委託を受けた民間支援団体などが運営している。
内閣府によると、センターへの相談件数は年々増加しており、23年度は6万9100件(前年度比6009件増)。
障害者の相談件数は示されていないが、民間に委託した調査によると、22年6~8月の相談のうち一定の割合が障害特性のある人で、「1~2割程度」と感じる相談員もいたという。
56カ所全てのセンターで電話、対面による相談は受け付けている一方で、メールは27カ所(48%)、SNSは9カ所(16%)にとどまる。
政府は多様な相談者が利用しやすくなるよう、メールやSNS、オンライン面談、手話通訳の導入を促しているが、進んでいないのが現状だ。
◇専門家「障害の特性に応じた支援を」
障害者の性暴力被害に詳しい日本女子大の岩田千亜紀講師によると、電話や対面以外の相談が好ましいのは聴覚障害者だけではない。発達障害者らの中には口頭での説明は苦手でも文字であればうまく伝えられる人らもいるという。
岩田講師は「さまざまな障害特性の被害者がいるということを想定しての支援態勢を構築すべきだ。障害者支援団体などと連携しながら早急に対応する必要がある」と話す。
メール、SNS相談ともに導入していないセンターにはどんな事情があるのか。
和歌山県が運営するワンストップ支援センター「わかやまmine(マイン)」の支援員は「メールやSNS相談の導入は検討すべき課題ではある」とした上で、実現できない理由に人材難を挙げる。
「今の態勢ではメールやSNSの返信がすぐにできないこともあり、勇気をもって相談してきた被害者に誠実な対応ができない可能性がある」
性暴力や障害者への適切な知識を持った支援員の育成が急務だという。
東日本でワンストップ支援センターを運営する自治体は、SNS相談の導入予定はないという。委託先の担当者は「SNSで被害内容を聞くのは難しい。真意を尋ねるには電話や対面が一番いい」と話す。
性暴力撲滅を目指すNPO法人「しあわせなみだ」を創設した中野宏美前代表は、若年層の自殺防止支援ではSNS相談が広がっていることを挙げ、「対面以外での相談支援のスキルアップに課題がある」と指摘する。
内閣府は20年から、性暴力に関する相談をチャットで受け付ける「キュアタイム」を実施している。ただし対応時間は午後5~9時に限られる上、ワンストップ支援センターのように総合的な支援をしているわけではなく、必要に応じてセンターにつないでいるという。【木原真希】
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