イチロー氏殿堂入り 第1回WBCをともに戦った「世界の王」も祝福

2025/01/16 15:37 

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 野球殿堂博物館は16日、今年の殿堂入りメンバーを発表し、競技者表彰は日米通算4367安打を放ったイチロー氏(51)=本名・鈴木一朗=が選ばれた。

 晴れの殿堂入りの通知式では、顕彰者にゆかりのあるゲストが招かれ、祝福のスピーチをするのが恒例だ。イチロー氏については、「世界のホームラン王」こと王貞治氏がゲストスピーカーを務め、「ボールとバットの芯を結ぶ天才で、人間業ではないと思った。走攻守、全てそろって『日本の野球はすごいんだ』というイメージを、米国の選手に与えてくれた。イチロー君の存在がかすむことはない」と祝辞を述べた。

 2人は、かつて同じ「ジャパン」のユニホームに袖を通して戦った間柄だ。2006年春に行われ、日本が初代王者に輝いた第1回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だ。当時、ソフトバンクを率いていた王氏は、日本代表「侍ジャパン」の監督も務めた。

 小技を絡めた「スモールベースボール」を掲げる「王ジャパン」のリーダー的存在だったのがイチロー氏だ。当時32歳で米大リーグ・マリナーズに所属し、5年連続でシーズン200安打を放っていた。

 王氏は05年10月の監督就任の正式発表に先立ち、イチロー氏に直接電話で出場を要請した。イチロー氏はこれを快諾し、2月下旬に福岡でスタートした代表合宿からチームに合流。大会本番では1番を任され、決勝の適時打を含む全試合で安打を放つ活躍を見せ、ベストナインにも選ばれた。

 昨年5月、東京ドームで「王貞治DAY」と銘打って行われた巨人とソフトバンクの公式戦では、イチロー氏が王氏へ動画でメッセージを贈った。

 「(王)監督のもとで戦った第1回WBC。優勝を決め、喜びを分かち合い、日の丸に包まれた瞬間を生涯忘れることはありません。後進の育成に励んでいらっしゃるお姿に、野球を愛する人たちが心を打たれています」

 歳月がたっても、イチロー氏の心に深く刻まれた歓喜と、王氏への敬意が詰まった言葉だった。

 そんなイチロー氏も引退後は全国各地の高校球児を訪ねるなど、若い野球人への指導や交流に意欲的な姿を見せる。授賞式のスピーチで「彼らとの出会いを通じて、それが僕の大いなるモチベーションになっている。さまざまな要因から野球が変わっているが、せめて子どもたちが向き合う野球は純粋なものであってほしい。それを強く意識して子どもたちと接していきたい」と今後の目標を語った。【川村咲平】

毎日新聞

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