広陵校長「大会運営に支障、信頼なくす」 一問一答 夏の甲子園

2025/08/10 17:16 

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 第107回全国高校野球選手権大会に出場していた広陵(広島)は10日、大会出場を辞退すると明らかにした。部員による暴力事案が発覚していた。2回戦で対戦予定だった津田学園(三重)は不戦勝となる。

 広陵の堀正和校長が兵庫県西宮市内で取材に応じた。主な一問一答は以下の通り。

 ◇人命を守ることが最優先

 昨日、広陵高校の運営母体である学校法人広陵学園の理事会を臨時に開催し、2回戦以降の出場を辞退することを決定した。過去に日本高校野球連盟に報告した、部員間の暴力を伴う不適切な行為だけではなく、監督やコーチから暴力や暴言を受けたとする複数の情報がSNS(交流サイト)などで取り上げられている。各方面の皆様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、深くおわび申し上げます。誠に申し訳ない。

 こうした事態を重く受け止め、本大会への出場を辞退した上で、速やかに指導体制の抜本的な見直しを図ることにした。

 新しい事実が発覚したわけではない。現在、第三者委員会などで調査をしていただいている事案については、全面的に協力をしていく。

 私も昨日、広島県高野連の副会長の辞任を申し入れた。

 現在、SNSなどで配信されている画像や投稿の中には、事実と異なる内容、臆測に基づく投稿、生徒の写真など、関係しない生徒への中傷や加害の予告も見受けられる。

 ――辞退に至った経緯は。

 ◆日本高野連から指導を受けた状況を踏まえ、大会出場の判断をし、今大会に挑んできたが、その中で、報告していることと一転、内容が違うのではないかということがSNSに上がった。中傷が出てきた。

 大会運営に大きな支障を来すと同時に、本校も一生懸命、甲子園を目指して頑張ってきた学校でありながらも、高校野球の名を、信頼を大きくなくすことになる。

 本校にいる生徒が登下校で中傷を受けたり、追いかけられたり、寮で爆破予告があったり、そういったようなこともSNS上で騒がれている。

 校長として生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることは、最優先することだということを踏まえ、先に述べたことと合わせて、辞退に踏み切ることを決意した。

 ――中井哲之監督とは話すタイミングはあったのか。

 ◆中井監督も本校の理事の一人なので、昨日の理事会で、急きょ宿舎から広島に帰ってきてもらった。中井監督は当事者であるため、理事会に出席することは難しい思うと進言を受け、話がしやすい環境を作り、このたびのことを客観的に話を詰めた。中井監督は「全て理事会の決定に委ねます」と申している。

 ――選手にはどのタイミングで伝えたのか。

 ◆昨夜、理事会後に宿舎にいる野球部長に連絡を入れた。選手は失意のどん底だったと思う。子供たちも心を立て直すことはまだ厳しい状況だが、落ち着いていたと聞いている。

 ――どのような対応を取れば良かったと考えているか。

 ◆一つ一つの事象を最後まで良い形というか、円満に両者が納得して終える。そのような形をとることが何より最優先だったと、校長として深く反省をしている。そのことを職員に指導できなかったことは、校長としての私の責任だと思っている。

 ――今回の事態で、関係のない選手も責任を負う形になったが。

 ◆子供たちのケアを含めて、真摯(しんし)に考えていく。

 ――中井監督からの辞任の申し入れはあったか。

 ◆運営体制や環境をきちんと把握し、調査をしていき、その上で(判断する)ということにしている。監督ともそういうことの話はまだ一切していない。ただ、その間はまず指導から外れてもらうということは伝えている。監督本人も承諾をしている。

 ――選手たちは(今回の事態を)知っていたのか。

 ◆基本的には、野球に集中するため、携帯電話を持っていかない。このことについては選手たちは何も分からない状態だったろうと思う。ただ、野球部長がいろいろ動きが慌ただしかったところもあって、何らか心配をしていた者もいるかもしれないが、昨晩が初めてだと思う。部長には、監督から連絡をしてもらった。

 ――これまでには大会前に辞退した学校もある。

 ◆新しく報告しなければならないことや、不祥事に関するようなことが出てくれば直ちに検討していると思う。だが、結果的にはそういうことがなく、現在も起こっていない。

 だが、大会運営に支障を来したこと。そして、高校野球の信頼を失っていくようなことになる。さらには、自校の生徒や教職員の命に関わるようなことが起きてしまうのではないか。そういったことが最終的な決断(理由)です。思いもそこが全てです。

毎日新聞

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