聖隷クリストファーに2000人が大声援 試合は一歩及ばず 甲子園

2025/08/15 19:25 

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 第107回全国高校野球選手権大会第10日は15日、2回戦を行い、静岡県代表の聖隷クリストファーは第2試合で西日本短大付(福岡)に1-2で惜敗した。約2000人が駆けつけた応援席も大声援で後押ししたが、あと一歩及ばなかった。県勢としては、第100回大会(2018年)で3回戦に進出した常葉大菊川以来となる1大会2勝はならなかった。【藤倉聡子、栗林創造】

 1点を追う八回、完封ペースだった西日本短大付の左腕・原綾汰(3年)をついに攻略した。

 1死から打席に入った1番・大島歩真(2年)は、一回にもう一息で本塁打という大きな左越え二塁打を放った。しかし、その後の2打席は変化球を制球良く織り交ぜる原に崩され、凡退していた。八回は大きな当たりを狙わず、「強い打球で、とにかく塁に出る」と修正。直球をしっかりたたいて左前へはじき返した。

 一回にスリーバント失敗で三振した小林桜大(3年)が今度はきっちりバントを決めて2死二塁。3番・武智遥士(3年)は「上村先生(敏正監督)が任せてくれたのだから、何が何でも打とうと思った」と振り返る。捕手として、七回まで毎回、計9安打されながら1失点で粘る高部陸(2年)をリードしてきた。「高部を助ける」の一心で低めの変化球を捉えて左前への安打。大島が俊足を飛ばし、同点のホームを踏んだ。

 その裏、西日本短大付に勝ち越されて2回戦突破はならなかったが、「自分が持っている以上の力は出せた」と武智が言う。7番打者として2安打を放った長谷川達也(3年)は「力が無いと言われていた自分たちが、甲子園でプレーし、人生の財産を得られた。次はもっと上に行ってほしい」と2年生にエールを送った。

 先発した3人の2年生の一人、江成大和はこの試合で2安打。「甲子園に出られなかった先輩と家族のため」、甲子園の土を持ち帰るが、「自分の手元には残さない」と決めている。大島も高部も、土は拾わなかった。持ち帰るのは、「再びここでプレーする」との決意だ。

 ◇高部陸「もう一度戻れるように」

 甲子園初出場、初勝利の立役者ともいえる2年生左腕・高部陸にとって、「全国レベル」を痛感させられる敗戦だった。

 一回、1死から三塁打を浴びた後は、勢いのある140キロ超の直球と、膝元に食い込むスピードのあるカットボールを武器に中軸打者を連続空振り三振に仕留めた。

 しかし、その後もコンパクトな振りで粘り強くボールを捉えにくる西日本短大付に毎回安打された。三回に先制を許し、味方が追いついた直後の八回は2連続長短打で決勝点を与えてしまった。

 これが現チームでは最後の試合。能力で突出する高部を「一人にしない」と、これまでは3年生がサポートしてきた。特に、控え投手の上田一心は、1学年下の高部が1年秋からエースになる悔しさを乗り越えて、兄のように寄り添ってきた。

 「思い通りいかない場面も、冷静に周りを見て、打たせて取ればいい」。そんな上田の言葉は、この日の粘りを引き出したかもしれない。「投手として引っ張り、隣で支えてくれた」と感謝の言葉を口にした高部。秋は自身が最上級生となる。

 「力が足りなかった」と寂しい言葉もこぼれたが、「もう一度、ここに戻れるよう頑張る」と誓う。聖隷クリストファーでのあと1年。成長が楽しみだ。

 ◇吹奏楽部や卒業生が駆けつけ応援

聖隷クリストファーの三塁側アルプス席には、吹奏楽部のメンバー40人と元部員の卒業生24人が駆けつけ、力強い演奏で選手を鼓舞した。9日の1回戦は県大会と重なって現役部員は甲子園入りできなかったが、浜松市の会場へ向かうバス内で動画を見て応援。勝利が決まった時は、大歓声がわき起こったという。部長の村岡瑞葉さん(3年)は、「吹奏楽部の部訓は、音は心の表れを意味する『音即心』。頑張れ、の気持ちを込めて演奏する」。初めての甲子園を「広いですね」と見渡しながら、「音が散らないよう、心を合わせて響かせたい」と話した。

毎日新聞

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