甲子園以上の野球熱? 沖縄で新たなレガシー残せるか U18W杯

2025/09/04 07:00 

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 沖縄県で野球のU18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)が5~14日に開かれる。夏の甲子園で沖縄尚学が初優勝した直後とあり、高校日本代表と沖縄県高校選抜による2日の壮行試合ではチケットが完売するなど野球熱が高まる中、2年に1度、世界一を決める熱戦が幕を開ける。

 壮行試合は主催者が7月から販売した各種内野席のチケットだけでなく、8月末に追加販売した外野席のチケットもすぐに完売する人気ぶりだった。

 ◇雨にも負けず…

 この日は雨にもかかわらず、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇には1万7969人の観客が詰めかけた。同球場で2014年11月に日本代表「侍ジャパン」と米大リーグ(MLB)オールスターチームの親善試合が行われた際の1万7941人を上回った。

 悪天候で試合開始は30分遅れ、中断も挟んだが、ほとんどの人が球場に残り、午後10時を過ぎても熱い声援を送った。

 夏の甲子園を沸かせた沖縄尚学の二枚看板である左腕の末吉良丞(りょうすけ)投手、右腕の新垣有絃(ゆいと)投手による投げ合いも大きな注目を集めた。試合は高校代表が4―3で勝利。沖縄選抜が最終回の七回に2点を返して追い上げるなど白熱した試合展開で、沖縄の競技レベルの高さを示した。

 高校代表の小倉全由(まさよし)監督は「この雨の中、帰らないでずっと見てくれた。沖縄の方のこの熱さは本当に素晴らしい。選手たちもあんな声援を送ってもらい気が抜けない。沖縄のあったかい応援に感謝しています」と語った。

 沖縄選抜を率いた沖縄尚学の比嘉公也(こうや)監督も「沖縄県民の野球熱の高さ、応援のすごさを甲子園以上に感じました。外野まで埋まっているのは初めての経験で、貴重な体験もさせていただけた。きょうの試合で、野球を続けたいと思う子が一人でも出てくれれば一番いいです」と期待した。ともに、沖縄の野球熱に言及していた。

 試合後のセレモニーでは主将の阿部葉太(ようた)選手(神奈川・横浜)がスタンドへ粋なあいさつをして盛り上げた。

 「沖縄県民のみなさん、沖縄尚学のみなさん、選手権大会優勝おめでとうございます。県民のみなさんの熱量はものすごいものを感じました。こんな素晴らしい沖縄で世界大会をできることをすごく楽しみにしています。2連覇を目指し、精いっぱい頑張りますので応援よろしくお願いします」

 大歓声に包まれ、前回23年大会に続く連覇を目指す高校日本代表を後押しするムードが醸成された。

 ◇「今年は沖縄の年」

 沖縄尚学の優勝から続く好循環は競技の普及にも大きな影響をもたらしている。

 8月31日の高校日本代表と大学日本代表の壮行試合では、1991年夏の甲子園で準優勝した沖縄水産でエースだった大野倫(りん)さん(52)が始球式を務めた。

 大野さんは現在、地元で野球の普及活動に携わっており、「今年は沖縄の年。(沖縄尚学の優勝で)子どもたちが夢を語り出している。我々も誇りに思ったし、おじい、おばあは泣いて拍手した。学校からは野球を教えてほしいという問い合わせが増えたし、トップレベルの選手たちのプレーを見てさらに大きな夢を持つ子どもたちが増えるんじゃないか」と喜ぶ。

 沖縄選抜との壮行試合では沖縄(現沖縄尚学)で62年夏の甲子園に出場し、プロ野球の阪神や広島で活躍した安仁屋(あにや)宗八さん(81)が始球式をした。

 安仁屋さんは「あれだけお客さんが入って興奮しましたね。我々の高校時代の沖縄勢は甲子園大会に参加することに意義があったが、今は優勝候補。子どもたちは野球を見て育つところもあるし、W杯が楽しみです」と心待ちにする。

 10年ぶりに日本で開催されるW杯が、野球熱の高い沖縄にどんなレガシーを残すのか。期待感が広がる。【長宗拓弥】

毎日新聞

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