一つ一つ乗り越えた「ゆなすみ」、いざ初の五輪へ 全日本フィギュア
フィギュアスケートの2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック代表最終選考会を兼ねた全日本選手権は最終日の21日、東京・国立代々木競技場でペアのフリーが行われ、「ゆなすみ」こと長岡柚奈選手、森口澄士選手組(木下アカデミー)が142・39点、合計215・30点で2年ぶり2回目の優勝を果たした。
国内大会のため参考記録になるとはいえ、マークした合計点は今季世界5位相当。それを知った2人は顔を見合わせ、「イエーイ」と笑顔で喜んだ。
全ての要素で減点はなく、得意のリフトはいずれも最高のレベル4。すっかりおなじみとなった独創的な力強いリフトのエグジット(終わり方)でも会場を沸かせた。
豪快なスロージャンプやリフトなど、ペアにはアクロバティックな要素が多い。それ故に常にけがと隣り合わせだ。それはトップ選手も例外ではない。
今大会も練習で長岡選手がスロージャンプの着氷を乱して右膝などを負傷。さらに前日のショートプログラム(SP)では2人が憧れる世界王者ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来選手、木原龍一選手組(木下グループ)の三浦選手が、左肩を脱臼し、この日のフリーを棄権した。
ただ「ゆなすみ」の2人はリスク以上にペアならではの魅力を語る。長岡選手は「けがをするとそれだけにフォーカスしてしまうところではあるんですけど、ペアでしか見せられない演技を見て興味を持っていただきたい」。森口選手も「2人で積み上げるのも良い時間。ペアでしか味わえないものがある」と語る。
特に今回、人気の「りくりゅう」が棄権したことで「その分、私たちが良い演技をして、(観客に)見に来て良かったと思ってもらいたい」(長岡選手)という願いを滑りに込めたという。演技後、2人を包んだスタンディングオベーションがその答えだった。
結成1季目は世界選手権出場に必要なミニマムスコア(最低技術点)すら取得できなかった。2季目の昨季は世界選手権に出場もフリーに進めず、今季は厳しい五輪最終予選に回ることを余儀なくされた。一つ一つの苦難を乗り越える度、着実に成長を遂げてきた。
1組のみの出場で立った2年前の全日本選手権の頂点と、今回の頂点とでは意味合いが全く違う。目標としていた五輪代表を確実なものとし、2人は言った。
「もっと、もっと、自信をつけていきたい」
憧れの先輩の背中を追って、ミラノでも躍動する。【倉沢仁志】
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