横浜を完封 神村学園・龍頭を覚醒させたアメとムチ センバツ

2026/03/20 17:44 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ◇選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)

 ◇○神村学園(鹿児島)2―0横浜(神奈川)●

 最大の山場は、「あとアウト一つ」の最終盤に待っていた。極限の状況でも神村学園の主戦右腕・龍頭(りゅうとう)汰樹(たいき)は、ストライクゾーンいっぱいを丁寧に攻めた。

 2点リードの九回2死満塁。「一球一球全力で」と外角いっぱいに直球、フォークを投げ、カウントを整えていく。最後は2ボール2ストライクから123キロのスライダーを振らせて、息詰まる接戦を締めた。無四球での6安打完封と、盤石の128球だった。

 元々は内野手だったが投手への思いを強く持ち、高校入学後に転向。マウンドでは性格が一変し、小田大介監督は「いつもはかわいい感じだが、プレー中は勝負根性と負けん気がすごい」と評する。相手打者をよく観察し、狙いと逆を突く能力にたけているという。

 大会直前まで調子が悪かった。練習試合で失点を重ねて弱気になる姿に、小田監督は「そこで立て直すのがお前の役割」と厳しい言葉をかけた。本当は龍頭一人が原因ではなかったが「彼が崩れたらチームは終わり」とあえて突き放した。

 試合数日前、小田監督は初めて龍頭に本心を明かした。

 「お前のボールは正直、悪くはない。野手のエラーも要因。でもそこで打ち取るのがエース。お前はそんなに悪くないから、自信を持って行きなさい」

 前日のブルペンには、厳しいコースに次々と力強い球を投げ込む龍頭の姿があった。「一気に(気持ちが)入った。これで行ける」と小田監督。重荷が消えた龍頭は期待以上の投球で聖地のマウンドで躍動した。

 最終打者のバットが空を切った瞬間、マウンドの龍頭もベンチの小田監督も思いきり拳を握りしめた。前回覇者の横浜が公式戦で零封負けを喫するのは5年ぶり。

 小田監督は「彼らの人生においても自信につながる。高校野球にも新たな風を吹き込む、何かが変わる一試合になったと思う」とその重みを強調する。まだ少し肌寒さが残る春の聖地で、かけがえのない一勝を手にした。【角田直哉】

毎日新聞

スポーツ

スポーツ一覧>