日鉄、USスチール買収で米政府に生産能力削減の「拒否権」提案か

2025/01/01 09:40 

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 日本製鉄がUSスチール買収を許可してもらうための最終手段として、米政府に対しUSスチールの生産能力削減に関する「拒否権」の付与を提案したことが12月31日、明らかになった。米紙ワシントン・ポストが、日鉄が米ホワイトハウスに送った文書を基に報じた。バイデン大統領の買収許可に関する最終判断の期限は1月7日という。

 報道によると、日鉄は東部ペンシルベニア州などにあるUSスチールの製鉄所の生産能力を、米政府の承認なしには10年間は削減しないと提案した。

 バイデン政権内では、日鉄が経営効率化のため買収後にUSスチールの米国内の鉄鋼生産能力を削減するとの見方がある。米政府に拒否権を与えることで「米国の国家安全保障上のリスクになる」との懸念を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとみられる。

 買収を巡っては、国家安全保障上の問題がないか対米外国投資委員会(CFIUS)が審査してきたが、12月下旬の期限までに結論がまとまらずバイデン氏に最終判断を委ねた。

 買収にはバイデン氏の有力な支持基盤である全米鉄鋼労働組合(USW)が強く反対。USWの意向をくむバイデン氏も否定的な考えを示してきた。だが、日米同盟も踏まえ買収を支持する声も多く、政権内で意見対立が続いているとみられる。

 報道によると、バイデン氏の最終判断の期限は1月7日だが、20日に発足するトランプ次期政権に判断を委ねる案も出ているという。トランプ氏は買収について「大統領として阻止する」と明言している。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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