トランプ米大統領、相互関税の90日間停止を発表 報復なしで10%適用

2025/04/10 02:57 

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 ◇中国は125%に引き上げ

 トランプ米政権は9日、約60カ国・地域に対する最大50%の「相互関税」の上乗せ分について、報復関税を発動せず米国との交渉を求める国・地域については、90日間停止すると発表した。この間は全世界に一律に課した10%の関税を適用して貿易交渉を進める。報復措置をとらず閣僚間での交渉開始を決めた日本も、90日間は10%の関税となる見通しだ。

 一方、大規模な報復関税を発表した中国に対しては関税を125%に引き上げる。トランプ大統領は9日、記者団に「報復措置をとるなら、我々は倍返しするつもりだと言ってきた。中国が実際に報復措置をとってきたので実施した」と述べた。

 トランプ氏は、中国への関税引き上げや相互関税の上乗せ分の90日間停止措置を「即時発効させる」と説明した。金融市場で米国債が売り込まれ、ドル安も進んだことが停止措置に影響したとみられ、発動から半日で方針転換した。

 相互関税を巡って、トランプ政権は5日に全ての国・地域に対し一律10%の関税を発動し、9日には米国の貿易赤字が大きい約60カ国・地域を対象に上乗せして発動していた。日本への関税率は24%。このほか、EUは20%▽韓国25%▽インド26%▽ベトナム46%――などとなる。

 トランプ政権の方針転換を受け、これまで米国への強硬姿勢を示していたカナダのカーニー首相は9日、「世界経済にとって歓迎すべき延期だ」とX(ツイッター)に投稿した。今月28日に総選挙を控えるカーニー氏は「選挙後ただちに米大統領と新たな経済・安全保障関係についての交渉を始める」とも記した。

 9日に最大25%の報復関税を課すことを決めたEUの行政執行機関トップのフォンデアライエン欧州委員長も10日、「歓迎する。世界経済の安定に向けた重要な一歩だ」と評価した。

 ただ、一律10%の関税措置を維持するほか、米国外で作られた自動車や鉄鋼・アルミニウムに対する25%関税は継続するだけに、世界経済の安定化はなお遠い。

 一方、トランプ政権は中国に対しては当初34%の相互関税を予定していたが、中国側が同率の報復関税を表明したことで50%の上乗せを決定。これとは別に合成麻薬の流入対策の不備を理由に制裁関税(20%)を発動しており、9日以降、関税率は計104%となっていた。中国が9日、報復関税を84%に引き上げると発表すると、即座に125%への引き上げを決めた。

 もっとも、トランプ氏はさらなる追加関税について「想像できない。これ以上やる必要はないと思う」と指摘。報復関税の応酬は、これで打ち止めにしたいとの意向もにじませた。【ワシントン大久保渉、ニューヨーク八田浩輔、ブリュッセル岡大介】

毎日新聞

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