梶裕貴、声の権利保護システムに期待 AI悪用の被害撲滅…声紋認証ウォーターマーク技術普及へ

2025/10/28 19:17 

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梶裕貴

 AI音声合成のリーディングカンパニーであるElevenLabs(本社:米国ニューヨーク州、CEO:Mati Staniszewski イレブンラボ)は、AIが生成したコンテンツの出所と来歴を検証するための国際的な技術標準「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」に賛同し、同標準に準拠したサービス提供をスタートさせた。

【画像】どういうこと?声紋認証ウォーターマーク技術【VoiceCAPTCHA x C2PA】説明

 2022年に設立されたイレブンラボは、AIオーディオリサーチ・技術のグローバルリーダーであり、企業、開発エンジニア、クリエイター、アーティストなど幅広い方に向けた最先端AIオーディオツールを構築。現在時価総額は66億ドル(日本円で約1兆円 2025年10月時点)で、プラットフォームは4000万人以上もの個人、そしてFortune 500企業の75%以上を含む数千もの企業が利用している。サービスでは、高品質なボイスオーバーを手頃な価格でスピーディに、そして大規模に作成したり、30以上の言語で対話型AI音声エージェントを立ち上げたりすることが可能となっている。

 これまでもプロ向けの音声クローン技術であるプロフェッショナル・ボイス・クローン(PVC)の登録時に使用される厳格な本人確認技術「VoiceCAPTCHA」を実装。さらに、そこから生成された音声に対して、独自デジタル透かしの埋め込み、およびその検知・識別機能 「AI Speech Classifier」という、計3つの独自技術を徹底し、世界最高水準の安全対策を先行して講じてきたが今回、この先行する強固な独自対策と、世界標準である「C2PA」を組み合わせることで、ユーザーへ安心なサービスを提供する。

 C2PAは、Adobe、Microsoft、Googleなどが設立した業界横断的なイニシアティブであり、デジタルコンテンツ(画像、動画、音声など)に、その生成・編集履歴(来歴)を記録する改ざん防止機能付きのメタデータ(Content Credentials)を付与する技術標準。このC2PA標準に準拠することで、ユーザーは生成された音声がAIによるものであるか、またその出所がどこであるかを容易に識別・検証することが可能となり、ディープフェイクやなりすましによる悪用を防ぐための重要な基盤となる。

 「C2PA標準」実装は、実装開始時が11月より順次、「C2PA」データ付与を開始予定。イレブンラボを通じて生成されたすべての音声コンテンツに、Content Credentials(改ざん防止機能付きの電子署名)を埋め込み、これにより、コンテンツの出所がイレブンラボであることを証明し、悪意ある改ざん検知が可能となる。

■「C2PA標準準拠」の具体的メリット
クリエイター(声優・俳優): 自らの声が不正に利用されるリスクを低減し、生成されたコンテンツの「出所証明」を可能にすることで、権利保護と収益化の機会を守ります。

消費者・ユーザー: 聴いている音声がAIによって生成されたものであるかを簡単に識別でき、情報の信頼性を高めます。

■声優・梶裕貴(声優、音声AIプロジェクト そよぎフラクタルプロデューサー)コメント

 日本のAIコンテンツ対応は今、他国に大きく遅れをとっています。このままでは、エンタメをはじめとする表現分野の衰退、さらには、人としての尊厳まで失いかねない事態になってしまうと危惧しておりました。AIの「攻める」使い方を学ぶと同時に、「守る」使い方も準備しておかねば、いつか取り返しのつかないことになってしまうと。しかし、法整備などによる根本的な解決が依然として為されぬ中、個人で行える対策に限界があることも事実。本当の意味で、日本語音声の権利を保護できるシステムの登場は、まだまだ先になってしまうのだろうなと半ば諦めかけていた、その時──

 まるで救世主のごとく誕生したのが、この度、満を持して公開された、改ざんされることのない声紋認証ウォーターマーク技術【VoiceCAPTCHA x C2PA】です。

 まさに私たちが待ち望んでいた、信頼のおける「声の権利保護システム」と言えるでしょう。

「クリエイティブ」に生かしたい人。

「ビジネス」として利用したい人。

もちろん「保護」だけを目的にする人も。

それぞれが、それぞれの利用方法で構わないのです。

あなたの声の権利を持つのは、他の誰でもない、あなた自身。

この判断に、AIへの賛否は関係ありません。

 【VoiceCAPTCHA x C2PA】が一刻も早く普及し、AIの悪用による被害がなくなること、またAIに対するイメージが、よりポジティブなものへと変化することを願っています。

AIは、あくまで技術であり、道具。

それを犯罪者にするか、パートナーにするかは、私たち次第です。

【VoiceCAPTCHA x C2PA】の登場は、間違いなくAIの歴史の転換点となるでしょう。

■イレブンラボ 創業者兼CEO マティ・スタニセフスキーコメント
 日本のアニメ・声優文化は世界でも類を見ないほど豊かで、私たちはその創造性に深い敬意を抱いています。AI企業として、イノベーションと同じくらい、倫理と信頼性を確立することが私たちの重要な使命だと考えています。

 私たちの技術は、これまでも独自の厳格な基準で安全性を確保してきましたが、「C2PA標準」への準拠は、私たちが日本のクリエイターコミュニティとの共存をより広く知っていただく機会になると考えております。AI音声技術を安心して活用いただける未来を共に築くという揺るぎない決意とともに、この取り組みが業界全体の透明性向上につながることを期待しています。
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