日俳連、津田健次郎のTikTok裁判判決を受け声明 「声」のパブリシティ権保護を司法が認め…

2026/10/05 18:29 

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津田健次郎 撮影/上野留加 (C)ORICON NewS inc.

 生成人工知能(AI)によって自身の声を無断で模倣した動画が投稿されていることから、声優の津田健次郎が、TikTok運営会社に動画の削除を求めた裁判で、東京地裁は9月30日、請求を退けた。この裁判判決を受け、日本俳優連合が10月5日、公式サイトをを更新し声明文を出した。

【画像】津田健次郎のTikTok裁判を説明!日俳連の声明文

 訴状によると、2024年7月~25年9月に氏名不詳者が特定のアカウントで、津田の声質を模したナレーションを付けて、都市伝説や雑学などを内容とした動画を188本投稿。TikTokには再生回数に応じて金銭が支払われる仕組みがあることから、月50万~75万円の収益を上げていたとしている。

 訴訟では、津田側が動画の削除や、津田の声を使用したことでパブリシティ権の侵害に当たることなどを訴えていたが、東京地裁は、動画は削除済みだとして請求を棄却した。一方、声がパブリシティ権の保護対象に含まれる判断を示した。

 この判決に日本俳優連合は公式Xで「津田健次郎さん TikTok裁判判決を受けて「声」のパブリシティ権保護を司法が認めた点は、大きな成果と受け止めています。日俳連は、今後とも生成AIをめぐる課題に対し、実演家の権利を守るガイドラインの策定を進め、必要な法整備を求めてまいります」と投稿。

 公式サイトでは「俳優・津田健次郎氏がTikTokに対し、自身の声を無断で模倣した音声を使用して投稿された動画について、削除請求を提起していた裁判の判決が、2026年9月30日に下されました」とし、「津田氏による動画の削除請求は、判決前に投稿者がアカウントを削除し、動画も削除されていたことから、地裁は提訴の意味が失われたとして請求を棄却しました。一方で、判決では「声」がパブリシティ権の保護対象に含まれるとの判断を示しました」と判決について説明した。

 続けて「結果として動画の削除という目的を果たし、同時に「声」がパブリシティ権の保護対象であるという司法の判断を得たことは大きな成果であり、今回の提訴における津田氏ならびに支援スタッフの皆様のご尽力に、日本俳優連合(以下、日俳連)は深い敬意を表します」と手応え。

 「津田氏側の提訴は、金銭的な損害賠償ではなく、むしろ自身の声を模倣した動画の削除という人格的権利を護る視点で行われましたが、この判決を通して以下の様々な問題を考えさせられました」と伝えた。以下、公式サイトより引用。

■使われた音声と津田氏の声の同定技術に関する問題
 津田氏の陣営は、専門技術を駆使して自身の声とTikTokの音声との同定判断をしたものと聞いております。日俳連が設立した実演家データベース「JVOXPRO」においても、同定検査を行いましたので、その結果を報告いたします。

<類似度システムの検証と類似度判定の数値目安>
 JVOXPROに実装した類似度判定ツールでは、多種多様なテストケースによる検証を実施しています。具体的には、音声ファイルを対象とし、同一人物、別人、および類似した声質での比較検証を行いました。さらに、異なるファイルサイズや、各種フォーマット(MP3、M4A、WAVなど)の各種ファイルを用いたテストも網羅しています。これらの検証結果を詳細に分析し、具体的な主要結果に基づいて4段階の判定基準を設けました。

<類似度判定基準>
類似度:判 定
0.90以上:本人一致の可能性が非常に高い
0.80以上0.90未満:本人またはAI生成本人音声の可能性が高い
0.74以上0.80未満:要確認ゾーン
0.74未満:他人の可能性が高い

<津田健次郎氏の類似度判定について>
 JVOXPROの類似度判定機能を用いて、津田健次郎氏の音声と八海(「ヤミー」を名乗る投稿者)が利用していた音声ファイルについて、いくつか検証しました。
両者の音声ファイルの類似度を判定した結果、最大スコアは0.881でした。津田健次郎氏の音声と八海が利用していたAI音声で行ったテストケースは全部で30件で、そのうち15件以上が0.80以上の高い類似度スコアを示しました。

 複数のテスト結果における類似度スコアの平均は0.814で、0.80以上0.90未満の範囲に該当します。この判定基準では、「本人またはAI生成本人音声の可能性が高い」という評価になります。以上の結果により、八海がAI化して利用していた音声は、津田健次郎氏の声を利用している可能性が高いと結論いたしました。

 ただし、同定については100%という結果が得られない限り、同定の問題で争われる可能性があります。そのリスクが提訴を困難にすることで、今後とも不法行為を助長させることにもなりかねません。一方で、検体がAIによる生成物か否かについては、一定の峻別が可能になりつつあるため、今後のさらなる技術開発が期待されます。

■津田氏の顧客誘引力をただ乗りしているか否か?
 著名人・有名人の声については、「誰の声であるか」と「その人の名前」が結びつく程度の知名度が必要という説がありますが、購買につながる視聴動機、すなわち「顧客誘引力」こそ重視すべきであると考えます。

 津田氏の声そのものが高い顧客誘引力を持ち、極めて多くの視聴回数を記録していたことは疑いのない事実です。声のパブリシティ権を考える上では、単に著名人・有名人という基準だけを要件とする場合、その声の持つ価値を十分に捉えきれない可能性もあるため、今後において誤った判断を生む原因ともなりかねません。

■パブリシティ権に「声」が含まれることが制定法に明記のない問題
 今回の判決において、「声はパブリシティ権の保護対象に含まれる」との判断が示されたことを足掛かりに、実演家のパブリシティ権に関しての明確な法制化を目指すべきと考えます。

■プラットフォームが被害の通知を受けた時点での情報保存等の対応の問題
 インターネット上における発信者情報の開示請求があった場合、即座にプラットフォームによって関連情報を保存・開示させる規定があれば、本件において投稿者の特定につなげることもできたはずです。

 最初の開示請求をプラットフォーム側が拒否し、訴訟が提起されるとすぐにアカウントが削除されたという一連の経緯については、無断生成の行為そのものと並んで問題視すべき点です。

 プラットフォーム側が情報の保存・開示責任を果たす仕組みが整えば、インターネット環境の透明性の向上に資することになるものと考えます。

■投稿型プラットフォームにおける視聴回数に応じた収益の在り方の問題
 投稿型プラットフォームでは、投稿を促す目的で視聴回数に応じた報酬を支払うシステムが採用されています。

 津田氏のような人気声優の声の無断利用で、視聴回数を伸ばし高額の報酬を得たとされる今回の件だけでなく、他人の著作物の海賊版を投稿することで多額の収入が得られてしまうという不法行為も横行しており、権利者が被っている損害額は莫大なものです。

 プラットフォーム側は、報酬を支払うことで投稿を促し、絶えず利益を上げながら、それら投稿に対して全く責任を負わなくてよいものでしょうか? こうした事例への対応については、世界的な視野での対策が必要と考えます。

■まとめ
 以上、述べて参りましたが、技術的にも、また法的にも環境が整わない中で、生成AIの利用が進んでいます。まして、俳優・声優の著作権上の保護は、現状でも全く十分ではありません。

 著作物本来の楽しみ方とは異なる利用について、自由に利用されることを許容する著作権法30条の4の存在。同法第91条第2項により、映画の著作物については実演家の録音権・録画権が及ばないこと。また、複製権が実演家には与えられていないことから、著作権法上は「声の無断利用をやめてください」という、基本的な意思を示すための法的根拠さえ実演家にはありません。

 こうした実演家の権利に関する法的不備は、現行の著作権法が制定された1970(昭和45)年から続いていることですが、弊連合は実演家の権利が適切に守られるよう、諦めることなく訴え続けてまいります。

 生成AIの利用に関しては、民間の側からAI利用のガイドラインを国に先行して策定し、国に対して法制化を促していく方法を採っていきたいと考えております。
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