「寂しくて、悲しくて、怖い」 日本に届くパレスチナ難民の子の声

2024/10/23 22:31 

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 <寂しくて、悲しくて、怖くて、心配で、緊張しています>

 <近くで爆撃の音が聞こえ、敵は難民キャンプ自体にも爆弾を落としました>

 イスラエルによる空爆や地上侵攻で、戦火が拡大しているレバノンには、いくつかのパレスチナ難民キャンプがある。そこで暮らす子どもたちから、切迫した状況を伝えるメッセージが日本の支援者の元に続々と届いている。

 イスラエル軍は9月以降、イスラム教シーア派組織ヒズボラ掃討を名目としてレバノン国内への攻撃を強化しており、子どもを含め多数の民間人が犠牲になっている。

 ◇伝えてくれた医師になる夢

 東京都内に事務局を置く、認定NPO法人「パレスチナの子どもの里親運動」(JCCP)。レバノンのパレスチナ難民キャンプで暮らす子どもたち(里子)に、日本の里親会員から託された生活や学業のための支援金を送る活動を40年にわたって続け、現在は153人の里子を支援している。

 レバノンの情勢が悪化して以降、里子からそれぞれメッセージを受け取った里親たちは、心を痛めている。

 2005年に里親会員になった大阪府吹田市の高校非常勤講師、吉田ゆみさん(69)。17年からシャイマーという少女の里親となり、年に数回のペースで文通したり、吉田さんからハンカチをプレゼントしたりして交流を深めてきた。編み物を覚えると、シャイマーさんは毛糸で編んだマスクを送ってきてくれた。

 現在、17歳。勉学に励み、医師になる目標をこの夏に教えてくれたばかりだった。

 情勢の悪化を受け、レバノン南部の都市の難民キャンプから別のキャンプへと避難を余儀なくされたという。10月7日に受け取ったメールには、こうある。

 <私たちは、私たちの思い出を、学校を、持ち物を、その小さな細部に至るまで、置いて家を出ました。暮らしていた場所を諦めなくてはならないのは、とても難しいことでした>

 <爆撃の音のせいで何日も眠れないことがありました>

 「とにかくつらい。返信を書くにも、言葉が見つからない」と、吉田さんはやるせない思いを口にする。

 「まじめに勉強を頑張っている子なんです。花が開く前に潰さないで。子どもたちを苦しめる攻撃は、今すぐやめてほしい」

 ◇失った子どもらしい日常

 東京都練馬区の大学教員、市橋秀夫さん(62)は02年に里親会員となった。今年春から支援するのは、リーンという9歳の女の子だ。

 10月13日に届いたメッセージには、リーンさんが暮らすレバノン南部の難民キャンプが爆撃を受けたことや学校が避難所になったこと、そして平和への願いがつづられていた。

 <この戦争は終わるのか、私の弟も母もみんなも無事でいられるうちに戦争は終わるのかと、考えずにはいられません>

 <私は、私たちが世界の他の子どもたちと同じように、平和に生きられますようにと願っています>

 市橋さんは「学校の試験をパスしたといった子どもらしい日常が書かれていないところに、余裕のなさを感じます」とため息をつく。「私自身、抱くのは無力感ばかりです。里親になって20年以上たちますが、(生活環境や社会情勢が改善して)『里親、やめます』と言えるような状況にはなっていない。遠い話ではなく、日本の人にももっと関心を持ってもらいたい」

 ◇先が見えない不安と恐怖

 JCCP事務局によると、レバノンでは南部の難民キャンプから大勢が北に逃れ、ひどいケースだと路上生活をしている人もいるとの情報が現地の支援団体から届いている。

 子どもたちから里親に送られたメッセージは「いずれも先の見えないことによる不安と恐怖を伝えてきています」という。

 事務局は「これから冬を迎えるのに、学校や路上で避難生活を送っている家族も多い。不安と恐怖の中で過ごす日々が早く終わりますように、寒さと食料の欠乏から救われますように、と願っています。そのために私たちができる最大限のことをしなくてはと思っています」としている。

 里子を含めた避難民支援のため、JCCPは「レバノン緊急募金」への協力を呼び掛けている。詳しくはウェブサイト(https://jccp.jimdofree.com/)かメール(jccp@nifty.com)で。【千脇康平】

毎日新聞

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