大阪・関西万博から新たな章へ サウジアラビアと日本、70年の友好

2025/04/13 10:00 

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 ◇ガーズィー・ファイサル・エス・ビンザグル駐日サウジアラビア大使

 万博は、イノベーションの促進、国際協力の強化、経済の発展において重要な役割を果たしている。2025年の大阪・関西万博、さらには30年サウジアラビアのリヤド万博の開催を控えた今、経済協力、文化交流、そして未来へのビジョンの共有を基盤とするサウジアラビアと日本の関係の深化について振り返る好機となるだろう。

 ◇進化し続ける強固な関係

 両国の関係は数十年にわたり、ますますダイナミックで多面的なものに発展してきた。11年の東日本大震災と福島第1原発事故の際、サウジアラビアの国営エネルギー会社アラムコが、石油製品や救援物資の供給を通じ日本を強く支援したことで、両国の関係を一層深め、信頼と相互支援を育む契機となった。

 近年では、重要な鉱物資源のサプライチェーン強じん化を目指し、電気自動車用バッテリーの製造などに不可欠な鉱業分野で画期的な合意を締結。また、クリーンエネルギー分野では、サウジアラビアが世界で初めてブルーアンモニアを日本に輸出し、富士石油による混焼発電の実現を後押しするなど、脱炭素社会への貢献が進んでいる。

 さらに「ライトハウス・イニシアチブ」では、日本の技術や投資をサウジアラビア市場に呼び込むことで、先進的なクリーンエネルギー輸出国を目指すサウジアラビアの目標を後押しするなど、2国間のネットゼロへのコミットメントが強化されている。

 政治面でも、サウジアラビア皇太子と日本の首相による定期的な首脳会談が、両国の協力関係をさらに深めている。今年初めには、第2回日・サウジアラビア外相級戦略対話が開催され、新たに発足した戦略パートナーシップ協議会の下で、政治、文化、観光、経済の各分野における連携強化が期待されている。

 ◇相互補完的な経済戦略

 経済面においても、両国の長期的ビジョンは互いに補完関係にある。サウジアラビアの国家戦略「サウジビジョン2030」は、経済の多角化、イノベーション、そして投資誘致を柱としている。一方、日本の「Society5.0」は、AIや先端技術を活用した超スマート社会の実現を掲げ、海外展開の機会を模索している。17年に発表された日・サウジ・ビジョン2030は、こうした両国の戦略の融合を目指しており、貿易、投資、技術協力を強化する枠組みとして進展を続けてきた。

 近年では、日本からサウジアラビアへのグリーンフィールド投資が年間300%以上増加するなど、飛躍的な成果が表れており、両国の関係はますます強固になっている。さらに「日・サウジ・ビジョン2030閣僚ラウンドテーブル」や「日・サウジ・ビジョン2030ビジネスフォーラム」など、官民双方による協議も活発化し、経済・貿易関係は着実に前進している。

 ◇文化交流による絆の深化

 経済協力の枠を超え、両国の文化的なつながりも年々強まっている。昨年行われたサウジアラビア国立オーケストラと合唱団の東京公演で、宮内庁式部職楽部や東京音楽大学オーケストラ・アカデミーと共演したことは、まさにその象徴だ。先月まで日本全国7都市で開催された「Meet Saudi」のイベントには、12万人を超える来場者があり、日本におけるサウジアラビア文化への関心の高まりを裏付けた。

 一方、サウジアラビアでも日本文化への関心は高く、大学で日本語教育が行われ、毎年多くの学生が奨学金を得て来日している。アニメやマンガ、ゲームなどのポップカルチャーも広く浸透しており、首都リヤドに拠点を置く「マンガプロダクションズ」では、日本のストーリーテリングに着想を得たアニメ作品などが制作されている。ドラゴンボールをテーマにした世界初のテーマパークも、サウジアラビアの巨大エンタメプロジェクト「キッディーヤ」に登場予定であり、両国の文化交流はますます盛んになっている。

 ◇未来を形づくる万博の役割

 万博は経済的な価値をもたらすだけでなく、文化の懸け橋としても重要な役割を果たしてきた。20年のドバイ万博では400億ドル(約6兆円)以上の経済効果と100万人超の雇用を創出したと試算されているが、その本質的な意義は、国際的なパートナーシップと文化的な相互理解の促進にある。

 25年の大阪・関西万博は、経済、環境、文化の各分野における進展を世界に示す、またとない機会となるだろう。そしてバトンが30年のリヤド万博へと渡されることで、このレガシーはさらに発展していくことが期待される。

 サウジアラビアを代表して、日本政府、そして大阪市に対し、万博開催への尽力と、長年にわたるパートナーシップに心から感謝申し上げる。日本の皆さまには、ぜひサウジアラビア館にお越しいただき、私たちの未来に向けた挑戦をご覧いただきたい。イノベーションと国際協力を通じて両国は今、新たな時代の扉を開こうとしている。

 過去を敬い、現在を分かち合い、より明るい未来を共に築いていきましょう――「世界が手を取り合う、希望に満ちた未来へ」。(寄稿)

毎日新聞

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