「自由を求めて…」 中国人の台湾「密航」相次ぐ 台湾側は警戒

2025/05/19 21:00 

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 台湾で中国人が密航したとみられる事案が相次ぎ、海巡署(海上保安庁に相当)が警戒を強めている。20日は頼清徳総統の就任から1年の節目。海巡署は、中国当局が明確な武力攻撃でない手段でダメージを与える「グレーゾーン作戦」を仕掛け、人心かく乱を狙っている可能性もあるとみている。

 16日朝、中国人男性(41)から台湾北部・桃園市の海水浴場近くにボートに乗って上陸したと通報があり、海巡署が男性や一緒にいた息子(17)の身柄を拘束した。男性は取り調べに対し、対岸の中国福建省からモーター付きゴムボート(全長約3メートル)に乗り、15日夕に台湾に到着したと話し「中国で迫害に遭い、自由を求めて来た」と説明したという。

 18日には中国人を名乗る別の男性が中国向けTikTok(ティックトック)の「抖音(ドウイン)」で「福建省福州市からゴムボートで出発し、15日午後に桃園に到着した」と話す動画を投稿。動画では砂浜に中国国旗が刺され、男性は「祖国・台湾の土を踏んだ」と話した。

 海巡署の調査では動画が改変された痕跡はなく、桃園の海岸で撮影されたのは事実という。一方で男性の様子に不審な点もあり、実際に中国から渡ってきたのかについて捜査を進める。

 19日に記者会見した海巡署幹部は「中国によるグレーゾーン作戦の可能性を排除しない」と説明した。中国軍が今年4月に台湾周辺で軍事演習を行った際にも、福建省沖に浮かぶ台湾の離島・金門島にゴムボートに乗って侵入しようとした中国人男性が台湾当局に拘束される事案があった。【台北・林哲平】

毎日新聞

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