国連、ガザ人道危機に警鐘 1万4000人の乳幼児が死亡する可能性

2025/05/21 09:33 

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 国連で人道問題を担当するフレッチャー事務次長は20日、英BBCラジオで、パレスチナ自治区ガザ地区に迅速に支援物資が届かない場合、48時間以内に約1万4000人の乳幼児が死亡する可能性があると述べた。イスラエルは19日、2カ月半ぶりにガザの封鎖を解除し支援物資の限定的な搬入を認めたが、住民に物資が行き届いておらず、深刻な人道危機が続いている。

 イスラエルは20日、小麦や医薬品などを積んだ93台のトラックがガザに入ったと発表した。国連のドゥジャリク事務総長報道官は同日の記者会見で、乳児用食品を含む支援物資を載せたトラック数十台が入ったが、住民には届けられていないと明らかにした。イスラエル軍が点検のために荷物の積み直しを求めているためで、イスラエルとガザの境界にあるケレム・シャロム検問所付近で立ち往生しているという。

 ドゥジャリク氏は、道路状況や安全上の問題から物資の輸送は「極めて困難」な状況が続くとした。国連は搬入が認められた物資は「必要とされる量の大河の一滴にすぎない」(フレッチャー氏)と強調し、全面的な制限解除を訴えている。

 こうした中、国際社会はイスラエルへの圧力を強めている。英国は20日、イスラエルとの貿易交渉を中断し、ヨルダン川西岸の一部の入植者に制裁を科すと発表した。またフランスのバロ外相は公共ラジオで、オランダが主導する、欧州連合(EU)とイスラエルの貿易や政治協力を定める協定の見直しを支持する考えを示した。

 英国とフランスはカナダとともに19日、支援物資の搬入拡大などを求める共同声明を出しており、状況が改善しない場合は「具体的な行動を取る」と警告していた。

 イスラエル軍は20日もガザへの攻撃を継続。軍のザミール参謀総長は「さらに作戦を拡大し、領土を占領する」と述べた。ガザ保健当局は20日、過去24時間以内に87人が死亡したと発表した。【エルサレム松岡大地、ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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