保守の投票率が「極めて低い」韓国大統領選 事前投票呼びかけに躍起

2025/05/27 20:45 

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 6月3日の韓国大統領選を前に、5月29日に始まる事前投票(2日間)について、保守系与党「国民の力」支持層の投票率が極めて低くなるとの世論調査結果が出て、国民の力の金文洙(キム・ムンス)候補(73)陣営が衝撃を受けている。しかし、これは「不正選挙陰謀論」を信じる保守層の間で「原因は事前投票」との見方が強く、金氏もこうした「陰謀論」に寄り添う発言をした経緯があるためだ。金氏は直前になって事前投票を奨励し始め、野党からは「コメディーだ」と批判されている。

 過去の選挙で不正があったとの主張は数年前から強硬な保守層を中心に、ユーチューブなどを通して広がっていた。投票用紙や投票箱の輸送時に外部の手が入るなどとして、事前投票を問題視する内容が多い。昨年12月に保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が不正選挙疑惑を主張して戒厳令を正当化したことで、更に拡散した。尹氏は今月21日、こうした「不正選挙陰謀論」に基づく映画を見に行って注目されている。

 尹氏の弾劾・罷免に反対の立場を表明してきた保守強硬派の金氏は、4月の大統領選予備選の討論会で「不正選挙論者の意見も傾聴しなければならない」と述べ、「我が国の選挙管理が不十分だ。特に事前投票制度に多くの問題がある」と発言。大統領候補に選出された際の演説でも「事前投票を廃止する」と訴えていた。

 ところが、世論調査で事前投票すると答える国民の力の支持者の割合が、進歩系野党「共に民主党」の支持者と比べ大幅に少ない結果が出ると、金氏は態度を一転。25日には「心配せず、事前投票に参加してほしい。私も事前投票に参加する」と宣言し、「万一、事前投票をためらい、本投票もできなければ大きな損失」と訴えた。

 大手紙「東亜日報」が24~25日に行った世論調査では、共に民主党の支持者で事前投票を行うと回答した人は54・6%だったのに対し、国民の力の支持者は10・9%だった。

 金氏のひょう変ぶりに野党からは「金氏が事前投票伝道師になった」と皮肉る声も出ている。共に民主党の報道官は「事前投票廃止を公約にした候補が事前投票をするとは、こんなコメディーはない」と批判。保守系野党「改革新党」から出馬した国会議員、李俊錫(イ・ジュンソク)氏(40)は「どうして不正選挙論者たちと討論しなければならないのか」とうんざりした様子で述べた。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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