米国介入で中東情勢は重大局面に突入 イランの対応が焦点

2025/06/22 14:41 

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 トランプ米大統領は21日、自身のソーシャルメディアで、米軍がイランの核施設3カ所を空爆したと発表した。イスラエルとイランの交戦が激しくなる中、イスラエルの後ろ盾となってきた米国も直接的に軍事介入した格好だ。イランの報復で紛争がさらに拡大する可能性が高まっており、中東情勢は重大局面に入った。

 米国によるイランへの攻撃は初めて。トランプ氏は21日夜、ホワイトハウスから国民向けに約4分間演説した。「我々の目的はイランの核(ウラン)濃縮能力を破壊すること、世界ナンバーワンのテロ支援国家による核の脅威にストップをかけることだった」と強調。「世界に対して攻撃がすばらしい軍事的成功を収めたと報告できる。イランの重要な濃縮施設は徹底的に、完全に取り除かれた」と述べた。

 一方で、「イランは今こそ平和を築かなければならない。平和がすぐに訪れない場合は、他の標的を正確に迅速に攻撃できる」とも語り、イランに報復しないようけん制した。米CBSテレビによると、米側は21日にイランに対して、体制転換に向けた動きは計画していないと伝達したという。全面的な対決を防ぐ狙いがあるとみられる。

 米軍が空爆したのはイラン中部のナタンツ、フォルドゥ、イスファハンの核施設。米FOXニュースによると、地下深くに施設が建設されたフォルドゥでは地下貫通弾「バンカーバスター」が6発使われた。その他の2カ所では巡航ミサイル「トマホーク」が30発使用されたという。

 国際原子力機関(IAEA)は22日、X(ツイッター)への投稿で「今のところ、外部での放射能レベルの上昇は報告されていない」と明らかにした。施設への被害の詳細には触れていない。イラン国営メディアは、フォルドゥなどの施設から核関連物質は事前に別の場所へ移されていたと伝えている。

 トランプ政権はイランの核兵器保有を防ぐことを目的に、4月以降イランと計5回交渉を重ねてきた。だが、米側が求めるイラン国内でのウラン濃縮活動の放棄をイランが受け入れず、交渉は停滞。両者が6回目の交渉に臨もうとしていた矢先の6月13日、イスラエルがイランの核関連施設への攻撃に踏み切った。

 トランプ氏はイスラエルの攻撃開始前は、イランとの交渉への影響を懸念し、イスラエルに自制を促していた。だがイスラエルの攻撃でイラン側に想定以上の被害が広がると、この機に乗じてイランに譲歩を迫る姿勢を鮮明にし、攻撃も辞さない構えに転じた。

 ただし、米国内では他国への軍事介入に否定的な支持層から反対する声も相次いでいた。こうした中、トランプ氏は19日、攻撃に踏み切るかどうかを「2週間以内に判断する」と表明。外交的な解決の余地を残していたが、イラン側がウラン濃縮の放棄を拒否する姿勢を崩さず、攻撃を決定した。イスラエルのネタニヤフ首相は22日に声明を発表し、「トランプ大統領の勇敢な決断は歴史を変える」と謝意を示した。

 今後の焦点は、イラン側の対応に移る。イランの精鋭軍事組織・革命防衛隊は22日、声明を出し、米国への報復を警告。ロイター通信などによると、米軍の攻撃後、イスラエルの空港や政府の施設に向けてミサイル40発を発射したという。

 また、イランのアラグチ外相は22日、トルコ・イスタンブールで記者会見し「外交の扉は常に開かれているべきだが、今はその時ではない。自衛権に基づいて対応せざるを得ない」と述べ、交渉による解決に否定的な姿勢を示した。

 イランは報復として中東の米軍基地を攻撃することなどが取り沙汰されている。情勢次第では米側がさらに反撃せざるを得なくなる可能性もあり、事態は緊迫している。【ハノーバー(東部ペンシルベニア州)松井聡、カイロ金子淳】

毎日新聞

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